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労働法務

2021.10.06

年次有給休暇は、買い取りしなければならないのか?

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年次有給休暇
社員から、業務が忙しくて年次有給休暇が消化できないから、買い取ってほしい旨相談がありました。買い取らなければなりませんか?

いいえ。買い取る必要はありません。

社員がその年に年休を取得しきれないことはよくありますが、その場合、年休は消滅するのか、それとも翌年以降に繰り越されるのか、いつ消滅するのか(いつまで繰り越されるのか)が問題となります。 

裁判例(国際協力事業団事件-東京地判平9121)は、翌年の繰り越しを認めて、2年の時効(労基法115条)にかからない限り年休を取得することができると判示しています。 

したがって、本件の社員の主張するとおり、年休はその発生から2年後に消滅します。 

それでは、会社は、その年度に消滅しきれなかった年休を買い上げることができるでしょうか。 

会社が年休権を事前に対価を支払って放棄させる合意は労基法39条に違反して無効であり、会社は依然として本来の年休日数の付与義務を負います(昭和301130日基収4718号)。 

したがって、会社には年休を買い上げる法的義務はありません。 

ただし、平成28年4月から、会社は、年10日以上の有給休暇を与えられる社員に、毎年時季を指定して年5日の有給休暇を取らせる義務があります。年休を買い上げる法的義務はありませんが、この社員の主張のように事実上年休権の行使が抑止されている場合は、労基法39条違反(年休権の侵害)を理由に会社が損害賠償責任を負うリスクがありますので、ご留意ください。 

このように会社には年休を買い上げる法的義務はありませんが、他方、年休権が時効や退職を理由に未消化のまま消滅するときに、その補償のために金銭を支払うことは労基法39条に違反せず許されます(東急エージェンシー事件-東京地判平17725)。 

実際の問題として、社員が退職時に、それまでたまった年休を一斉に行使することがありますが、時季変更権を行使しようにも、退職予定日を超えて時季変更権は行使し得ず、結果的に業務の引継ぎが行われないなどの支障が生じることもあります。業務の引継ぎをしてもらうためにも必要な日数は出勤してもらって、その代わりに取得しきれなかった年休を買い上げることは実務上よく行われています。 

法的義務がない場合でも年休を買い上げた方が会社の利益となる場合や無用な労働トラブルを回避できる場合は積極的に年休の買い上げを検討すべきです。 

年次有給休暇については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。

「2021年 最低賃金の引き上げ」についてはこちらをご覧ください。

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