労働法務
2021.11.26
昇格を拒否する社員を懲戒処分していいのか?
- ある社員を管理職にしようとしたところ、「責任が重たくなるのは嫌なので、昇格させてほしくない」と言われました。もしこのままその者が昇格を拒否した場合には、業務命令違反を根拠として軽い懲戒をしていいでしょうか?
はい。懲戒処分可能です。
人事評価は、使用者の裁量的判断の性格を有しており、著しく不合理で社会通念上到底許容できない判断が行われたという場合を除いては、違法とはいえないものと解されています(光洋精工事件-大阪高判平9・11・25など)。
昇格は一般的に社員にとって利益となるものであることから、それが「著しく不合理」であると認定されるおそれは少ないものといえます。
したがって、特殊な事情がない限りは、昇格は有効であり、またそれに伴う懲戒処分も適法となる可能性が高いといえます。
どうすればいいのか?
他方で、当該昇格が「不当な目的」に基づくものであると認められた場合には、裁量を逸脱したものとして無効とされる可能性があります。
特に、管理職への昇格については、当該社員の組合員資格が失われることから、「昇格に名を借りた組合潰し」であると認定されれば、当該人事異動も無効とされる可能性があるでしょう。また、管理職に昇格させて残業代を節約する目的の場合、そもそも「管理監督者」の解釈自体誤っている可能性が高いですが、昇格の目的も不当と言えるでしょう。
結局、昇格を行う場合についても、社員から不満が出ないであろうとタカをくくるのではなく、しっかりとした理由付けをもって行うべきであり、またその際には従業員に対してしっかりと説明して納得してもらうことがよいでしょう。
昇格の拒否については、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにご相談ください。
「定期昇進は、必ずしなければならないのか?」については、こちらをご覧ください。