労働法務
2021.12.21
労災疑いのあるうつ病の社員を休職期間満了で、自然退職できるか?
- 社員が、仕事に対するプレッシャーからうつ病に罹り、労災の疑いはあるものの、私傷病休職扱いとしました。 1年間の休職期間を経ても、うつ病は回復しないため、休職期間満了に伴い自然退職としました。その社員から、「会社の責任でうつ病になったから自然退職は無効です」「私のうつ病は会社の責任による労災ですから、休職期間中の給料も支払ってください」と請求してきました。どうすればよいのでしょうか?
今回うつ病を罹患した社員も「業務上の疾病」(すなわち「労災」である)と評価されると、休職期間満了に伴う解雇も労基法19条1項本文の解雇制限に違反して無効となりますが、自然退職扱いの場合も労基法19条1項が類推適用されます(アイフル(旧ライフ)事件‐大阪高判平成24・12・13)。
したがって、このような自然退職扱いは労基法19条1項の類推適用により無効となり、さらに民法536条2項により、当該社員のうつ病について会社に責任(帰責性)があれば、その休職期間中の給料も支払わなければなりません。
どうすればいいのか?
まず、社員や管理職等に対して、定期的にメンタルヘルス研修をすることを推奨します。具体的なメンタルヘルス不調の事例を紹介して予防策を学ぶことなどが挙げられます。
また、社員の健康管理のため、産業医及び衛生管理者を中心に健康管理に関する職務を適切に行うことが重要です。メンタルヘルスケアは、継続的かつ計画的に進めることが必要で、衛生委員会等で健康管理について調査審議を行うようにします。
さらに、健康診断で異常の所見がある場合には、健康保持に必要な措置についての医師の意見を聴き、事後措置(フォロー)をとることが重要です。特に、①時間外労働が月100時間を超えている、②疲労の蓄積が認められる、③本人が申し出ている、この3つの要件に該当していれば、医師の面接指導を受けさせる義務があります。また、時間外労働が月80時間を超えており、疲労蓄積が認められ、または健康上の不安を感じ、本人からの申出等がある場合には、医師の面接指導その他これに準ずる措置を実施する努力義務があります。会社は月80時間を超える長時間労働をしている社員については、時間管理や勤務状況の把握、疲労蓄積がないかなど、特別な健康配慮が必要です。
メンタルヘルスについては、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにご相談ください。
「労災疑いのあるうつ病の社員を解雇してよいか?」については、こちらをご覧ください。