労働法務
2022.01.04
休職と復職を繰り返す社員に退職勧奨。そのリスクは?
- うつ病により休職と復職を繰り返す社員がいます。これまで3度休職しては休職期間満了直前に復職し、また半年も経たずに休職しています。 今回、再び休職を求めてきたので、退職勧奨しました。リスクがありますか?
復職する見込みがない社員には休職を認める必要はありません。
私傷病休職制度は、会社による解雇猶予措置であり、労働契約を維持しながら、労働者に治療の機会を与えるものですので、休職期間中に私傷病が治癒して復職する見込みがない場合まで適用しなければならないものではありません。
裁判例(岡田運送事件-東京地判平14・4・24)でも、「休職制度があるからといって、直ちに休職を命じるまでの欠勤期間中解雇されない利益を従業員に保障したものとはいえず、使用者には休職までの欠勤期間中解雇するか否か、休職に付するか否かについてそれぞれ裁量があり、この裁量を逸脱したと認められる場合にのみ解雇権濫用として解雇が無効となる」としたうえで、「仮に休職までの期間6か月及び休職期間3か月を経過したとしでも就労は不能であったのであるから、被告が原告を解雇するに際し、就業規則8条に定める休職までの欠勤期間を待たず、かつ、休職を命じなかったからといって、本件解雇が労使間の信義則に違反し、社会通念上、客観的に合理性を欠くものとして解雇権の濫用になるとはいえない」と判断されています。
したがって、復職する見込みがないとして、休職を認めず解雇することが可能です。過去の裁判例(Sケーブルシステム事件-東京地裁平19・6・8)でも、休職と復職を繰り返す社員の解雇が有効とされたものもあります。
どうすればよいか?
うつ病などのメンタルヘルス不調のケースでは、休職と復職を繰り返す社員がいます。これでは会社は人員計画を立てることができず、社内の士気低下にもつながります。
このようなケースに対応できるように休職期間の通算規定を設けるとよいでしょう。
なお、メンタルヘルス不調のケースでは、類似の症状でありながら、医師により病名が異なるケースがあります。休職期間の通算規定を設けるにあたっては、「同一」だけでなく「類似」の理由の場合も休職期間を通算することを規定しておきましょう。
(休職期間の通算)
第○条 休職する従業員については、復職後12ヶ月以内に、休職の原因となった同一ないし類似の理由により再度休職する場合には、休職期間を通算する。
2 同一ないし類似の理由による休職は1回に限る。
メンタルヘルスについては、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにご相談ください。
「長時間労働でうつ病のリスクは?」については、こちらをご覧ください。