労働法務
2022.05.02
パワハラの類型(④過大な要求) って何?
- 当社を退社したある社員が、「在職中に直属の上司から、毎月100時間以上の残業をしてもこなせない量の業務を課された。そのせいでうつ病になった。パワハラだ」と言ってきました。パワハラに該当するでしょうか?
パワハラの可能性が高いです。
厚生労働省では、パワーハラスメントの6つの類型の1つとして、「過大な要求」を挙げ、具体的行為として「業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害」を挙げています。
したがって、裁判において、上司が社員に対して「業務上の適正な範囲を超える業務を強要した」と認定された場合には、それは不法行為と評価され、会社に対しても、使用者責任に基づく損害賠償責任が認められる可能性があります。
国際信販事件(東京地判平14・7・9)では、担当業務が多忙を極めており、本人が業務過多を申告していたにも関わらず、人員補充、他の労働者への支援の指示もせず長時間労働を余儀なくさせたとして使用者責任が認定されました。
本件では、100時間以上の残業を行なってもこなせない量の業務を課しているという点で業務の適正な範囲を超える業務を供与したと認定される可能性が高いでしょう。業務時間は認定において客観的な事実として判断における影響度が大きいと考えられます。
ただし、実際に上司の命令が「過大な要求であった」か、あるいは「適切な業務指示であったのか」の線引きは、性質上、裁判でも相当に難しいものになります。個別具体的な事案の諸々の事情を総合的に考慮したうえで、判断されることになります。
どうすればいいのか?
「過大な要求」と同様に、「不正行為の要求」を行った場合もパワハラの一態様になります。このような事象を放置すれば、会社の責任も問われることになりますので、発見次第、注意・指導または懲戒処分を行って、会社はこのような行為を許容していないという姿勢を見せるべきです。
また、会社にとってはこのような問題の発見そのものが困難な場合もあるでしょう。ハラスメント相談窓口や、内部通報窓口を設置するなどの方策も考えられます。あわせて、管理職研修などを実施することも効果的でしょう。
しかしながら、より根本的な解決策は、やはり会社がハラスメントを許容していないという姿勢を見せ、相談しやすい風土を醸成することにあります。このような風土づくりが、究極的には会社の将来的な賠償リスクを大きく低減することになります。
パワハラで悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「パワハラの類型(③人間関係からの切り離し)って何?」については、こちらをご覧ください。