労働法務
2022.05.23
マタハラの定義とは何ですか?
- 女性社員が妊娠したので、本人には説明することなく、軽易な業務を行う部署に配置転換し、降格・減給しました。ところが、女性社員が「マタハラである」と主張しています。本当にマタハラですか?
マタハラです。
妊娠・出産・育児休業等を理由に降格・減給を行なったのであれば、法違反です。
均等法9条3項では、「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定めています。これがマタハラの定義です。
広島中央保健生協(C生協病院)事件(最一小判26・10・23)では、妊娠・出産等を理由とした降格が均等法9条3項に違反し違法であり、無効とされました。(俗にいうマタハラ裁判)
どうすればいいのか?
広島中央保健生協(C生協病院)事件(最一小判26・10・23)は、「妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として禁止する取り扱いにあたる」としています。
同事件では、降格が均等法違反にならない場合として、①「当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主の説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向に照らして、当該労働者について自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」、または②「事業主において当該労働者について降格の措置をとることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保など業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度に照らして、上記措置につき同条の主旨及び目的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき」を挙げています。
つまり、①本人が承諾した場合、②特段の事情がある場合でなければ、妊娠・出産・育児休業等を理由とする労働条件の不利益な変更は原則として認められません。特段の事情は客観的にはなかなか認められません。労働条件の不利益を行なう場合には、本人に対して十分に説明を果たし、新たな労働条件への合意を書面に残しておくことが必要です。
マタハラで悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「出産手当金」については、こちらをご覧ください。