労働法務
2022.06.06
社員が、行方不明なので退職手続きしてよいか?
- 当社の社員が、突然無断欠勤をするようになり、その後全く連絡が取れないまま、既に15日間も無断欠勤が続いています。そこで、雇用保険や社会保険の資格喪失届等を提出して、退職の手続きを行いました。良いでしょうか?
就業規則に「行方不明による欠勤が14日に及んだときは退職とする」と記載があれば、退職手続きして問題ありません。
2週間以上の無断欠勤は、「解雇予告除外認定」に関する通達(昭23・11・11基発1637号)でも、解雇予告除外認定をすべき事例と認められています。したがって、就業規則において「無断欠勤が2週間に及んだとき」が(懲戒)解雇事由と定められていれば、(懲戒)解雇が可能です。
(懲戒)解雇といっても、行方不明者には(懲戒)解雇の意思表示を伝えることができませんので、公示送達を利用する必要があります。公示送達とは、簡易裁判所に申立てをして、裁判所の掲示板、官報に掲載をすることです。官報に掲載した日から2週間が経過したら、相手方にその意思表示が届いたものとみなされます。
また、労働基準監督署に「解雇予告除外認定」を行えば、解雇予告手当を支払う必要もなくなります。
もっとも、後で行方不明の原因が病気や怪我等社員に帰責性のない事情であったと判明したときには、(懲戒)解雇が無効となるリスクがあります。したがって、社員が行方不明になった場合の対応で最も重要なのは、行方不明になった原因と本人の行方について徹底した調査を行うことです。裁判例(国・気象衛星センター(懲戒免職)事件-大阪地判平21・5・25)では、46日間の無断欠勤をした社員への懲戒解雇が、過去に同僚が上司に相談して宗教の勧誘を止めるようにその社員に働きかけるように求めていたこと、無断欠勤がそれまでの勤務状況・行動と連続性がないことから、上司は無断欠勤がその社員の自由意思であることについて疑いを抱くことが十分可能であったとして、処分取消しになっていますので、注意が必要です。
どうすればいいのか?
わざわざ公示送達をして(懲戒)解雇することが手間であり手続きを簡便にしたいのであれば、就業規則において退職の事由として「行方不明による欠勤が14日に及んだとき」と定めることをお勧めします。
このような規定があれば、自然退職扱いすることが可能であり、(懲戒)解雇の際に必要な公示送達手続きを省略することができます。
ただし、解雇に伴い退職金を減額するような場合は、公示送達で解雇しておくことが必要です。裁判例(兵庫県社土木事務所事件-大阪高判平8・11・26)も、公示送達手続を行わなかったため、行方不明を理由とする懲戒免職の効力が無効とされ、結果的に退職金の支払いを余儀なくされています。
社員が行方不明で解雇したらいいのか迷ったら、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「勤怠不良で解雇することはできるのか?」については、こちらをご覧ください。