労働法務
2022.06.27
横領があった場合の懲戒解雇までの手続は?
- 横領が発覚しました。経理担当者は1名の社員のみであり、この社員が作成した二重帳簿も見つかったので、この経理担当者が横領したことは客観的にも明らかです。 そこで、当社は、その社員の弁明を聞くことなく、直ちに懲戒解雇しました。いいですよね?
懲戒解雇無効とされる可能性が高いです。弁明の機会を与えない懲戒処分は無効となります。
懲戒処分を行うについて、抑えるべきポイントは「①事実の確認」「②法的評価(懲戒事由該当性の検討)」「③処分の重さの検討」です。この一般論は、本件のような「横領」の事例においても妥当します。
では、本件のように客観的証拠から横領が明かである場合に、「①事実の確認」という意味で「弁明の機会」を付与する必要があるのでしょうか。本件と類似の裁判例(東京地判平15・10・9)では、「懲戒解雇が懲戒処分の極刑であることを考慮すると、懲戒解雇の適否について公正な決断をするためには、就業規則等に特段の手続規定が定められていなくても、懲戒事由に該当する具体的事実を被懲戒者に告げて弁明の機会を与え、その事実の有無のみならず、動機、態様、懲戒事由該当性についての本人の認識等について明らかにすることが最低限必要であると解される」と述べた上で、懲戒解雇を「原告に弁明の機会を与えずになされた点で重大な手続違反があるから、その余について判断するまでもなく無効といわなければならない」と判示されています。
すなわち、どれだけ客観的な証拠が存在しても、弁明の機会を付与しなければ、懲戒解雇は無効となります。
どうすればいいのか?
前掲裁判例はあくまで「懲戒解雇」について言及していますが、この考え方は懲戒処分全般に妥当します。弁明の機会の付与は、事実の確認のみならず、その情状面を明らかにするという意味合いもあり、また適正手続きの保証という意味合いもあるものですから、必ず行っておくべきです。
横領があった場合の懲戒解雇までの手続で悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「通勤手当の不正受給した社員を解雇できるか?」については、こちらをご覧ください。