労働法務
2022.07.04
横領の強い疑いのある社員が、調査協力を拒否。懲戒解雇できるのか?
- 横領を行った疑いのある社員Aに対して、事実調査を行うことにしたのですが、その社員Aが度重なる説得にも応じず事実調査に協力しようとしません。当社は、他の情況証拠から見て社員Aが横領を行ったことは明らかであると考え、また調査を拒否したことから、懲戒解雇を行いました。いいですよね?
懲戒解雇有効とされる可能性が高いです。
本件では、懲戒処分を行うについての「①事実の確認」「②法的評価(懲戒事由該当性の検討)」「③処分の重さの検討」のうち、「①事実の確認」が問題となっているものです。また、本件については「当該調査拒絶をどのように法的に評価して懲戒処分に反映するのか」という問題もあるものです。
まず、前段に関しては、貴社が何度かAさんに対して説得を行ったというのであれば、事実の確認として果たすべき手順は踏んでいるものと思われます。あとは、他の客観的な証拠などから、Aさんの横領行為を認定するに足りるか否か、という点により、取るべき対応が変わってきます。
もし貴社が「他の証拠からAさんの横領行為を立証することが、可能である」と判断した場合には、「横領行為を認定した上での、それに基づく懲戒解雇処分」を行うことになります。その際、「調査拒絶」という事実は「不利な情状の一つ」としての意味合いを有することになります。横領行為については、その回数等の多寡を問わず懲戒解雇の相当性が肯定される可能性が高いことから、懲戒解雇有効とされるでしょう。
対して、「他の証拠からAさんの横領行為を立証することが、裁判上不可能である」と判断した場合には、「調査協力義務違反を根拠とした懲戒処分」を行うことが考えられます。その場合には、「調査拒絶」という事実は「懲戒処分の根拠事由」としての意味合いを有することになります。 ただし、この場合には、懲戒による「解雇」まで有効とされる可能性は、低いでしょう。
どうすればいいのか?
上記からも明らかなように、横領における事前調査において、何よりも重要であるのは「他の客観的な証拠の存在」および「他の従業員の供述」です。従って、事実の確認を行う際には、本人に気付かれないようにまずこれらの証拠を十分に収集して検討を行い、その後に本人に対する事情聴取を行うのが肝要です。であるといえるでしょう。
横領の強い疑いのある社員が、調査協力を拒否した場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「横領があった場合の懲戒解雇までの手続は?」については、こちらをご覧ください。