労働法務
2022.08.22
休職期間中に軽微な兼業をして、懲戒解雇は有効か?
- 病気療養を理由に休業している現場の社員が、会社に無断で、同業の会社で働いたことが発覚しました。その者曰く、「若干の報酬を受け取ったが、常勤として勤務したのではない。知り合いがいる気安さからたまたま遊びに行ったついでに、頼まれるままに作業を手伝った」とのことでした。当社は就業規則に基づき、その者を懲戒解雇しました。よろしいでしょうか?
「ブラック企業」の可能性が高いです。
本件においても、懲戒処分を行うについての「①事実の確認」「②法的評価(懲戒事由該当性の検討)」「③処分の重さの検討」のうち、「③処分の重さ」が問題となっているものです。
ポイントは、「Aさんの就業先が競業にかかるもの」であったものの、「Aさんが管理職でなく、現場の職員であった」こと、そして「Aさんが常勤として甲社に雇われたものではなかった」ことです。
本件と類似の裁判例(東版事件-東京地判昭59・2・28)は、労働者が、「常勤として仕事をしたのではなく、元の同僚のところへ遊びに行き、その機会に仕事を手伝った程度であり、また、原告は被告会社においてその機密事項を扱う立場になかったことを考えると」として、懲戒解雇は有効とはいえないと判断しました。
この趣旨に照らせば、本件も懲戒解雇が無効とされる可能性は十分にあるものということが出来るでしょう。
どうすればいいのか?
社員の兼職が、「競業にかかるものであった」からといって、直ちに懲戒解雇が有効になるものではないことは、十分に注意すべきといえます。ここでも、懲戒処分の重さを決める際には「個別具体的な事情に応じた情状判断」が必要であることは想起されるべきです。本件のような事例においても、例えば「Aさんに全く反省の色が見えない場合」や「Aさんが常勤として働いていた場合」など、個別具体的な事情が変われば、結論も変わりうるものであるといえます。
懲戒処分一般に言えることですが、類似の事例や判例の趨勢などにも鑑みたうえで、懲戒処分そのものの効果・インパクトや、それが無効とされた場合のリスクを踏まえて、その場その場で適切な判断を行うことが重要であるといえます。
兼業で解雇が有効かどうか悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「競業する会社で兼職した場合、懲戒解雇は有効か?」については、こちらをご覧ください。