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労働法務

2022.08.29

横領があった場合、隠蔽工作した管理者に責任をとらせて解雇は有効か?

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解雇 / 横領
当社の社員が不正経理によって横領行為を行っていましたが、その社員の上司も、そのことを知りながら黙認するに止まらず、積極的にこの横領行為を隠蔽する工作を関与し、その結果当社に多額の損害を与えました。 当社はこの社員のみならず上司も懲戒解雇をしましたが、いいですよね?

懲戒解雇は有効とされる可能性が高いです。

管理者(上司)は会社に対して、その部下の行動について監督指導義務を負担しており、その義務を怠ればその懈怠の程度に応じて懲戒処分の対象となります。 

裁判例(関西フエルトファブリック事件大坂地裁平10323では本件と類似の事案において懲戒解雇処分が有効とされています 

 

どうすればいいのか? 

部下の業務遂行に対する上司の管理・監督責任が問われた以下の裁判例に共通する要素は、①部下の不正行為等を黙認したに止まらず、②隠蔽工作等に積極的に関与し、③その結果会社に多額の損害を与えたことです。 

・国際油化事件-福岡地判昭621215

部下が個人的に補填するのを黙認していた支店長の懲戒解雇(解雇有効) 

・和光商事事件-大阪地判平31015

部下の業務遂行に関する監督・指導の懈怠により会社に損害を与えたことを理由とする懲戒解雇(解雇有効) 

・尾崎町農協事件-大阪地判平7426

巨額の出金手続きを行った部下の管理・監督を強化せず、その後も出金・入金手続きを承認し、これらの発覚を防ぐために経理操作をした参事の懲戒解雇(解雇有効) 

 

 これに対してそもそも上司が部下の不正行為を知り得なかった場合はいかなる懲戒処分も無効となる可能性が高いと言えます。 

また上司が部下の不正行為を黙認していても①積極的な関与がない場合や②結果的に会社に損害が発生していない場合は一定程度の懲戒処分は可能だとしても懲戒解雇処分は処分の相当性に欠き無効となる可能性があります。 

たとえば部下の乗車拒否事件について指導監督義務違反があったとしてなされた課長に対する諭旨解雇処分の効力が争われた裁判例(大阪相互タクシー事件-大阪地決平71117では部下の乗車拒否事件につき、指導監督義務違反があったとしてなされた課長に対する諭旨解雇処分について「課長には、個別指導の義務があり、右個別指導の中には、乗務員に対し、乗車拒否をしないよう指導監督する義務も含まれている」と認めつつ、「債権者(著者注:課長)の指導監督義務違反の程度、Aタクシーの担当課長の処分との比較、債務者(著者注:会社)の課長らの過去の処分例との比較等を総合考慮すれば、本件乗車拒否事案において、債権者(著者注:課長)を指導監督義務違反があるとして諭旨解雇処分とするのは、重きに失する処分である」として諭旨解雇を無効と判断しています。 

横領で解雇が有効かどうか悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。

「休職期間中に軽微な兼業をして、懲戒解雇は有効か?」については、こちらをご覧ください。

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