労働法務
2022.09.27
所持品検査は本人の同意がなくても強制できるか?
- 社内で金品の紛失事件が起こりました。会社は所持品検査を行おうとしたところ「これはプライバシーの侵害だ。うちの会社はブラック企業だ」と拒否する社員がいました。所持品検査は本人の同意がなくても強制できるのでしょうか?
所持品検査は、一定の要件を満たせば、強制できます。
一般に会社で実施されている所持品検査は、業務上の不正行為が発生した場合またはその疑いが生じた場合に職場秩序の確保や会社財産の保全等を目的に行われます。
通常の所持品検査は社員のカバンやバック、机やロッカーの中などに不正に取得した会社の金品を隠していないか検査します。ただし、これは社員のプライバシー侵害のおそれがあるという側面を持っています。所持品検査の実施について、社員が同意すれば何ら問題は発生しませんが、同意しない場合は、所持品検査を受けることを義務付けて、強制することができるのかという問題があります。
西日本鉄道事件(最二小判昭43・8・2)では「所持品検査が、就業規則その他、明示の根拠に基づいて行われるときは、他にそれに代わるべき措置をとりうる余地が絶無でないとしても、従業員は個別的な場合にその方法や妥当性を欠く等、特段の事情がない限り、検査を受忍すべき義務がある」として、会社が所持品検査を実施し、従業員がこれに応じる義務があることを認めました。
当該判例のポイントをまとめると、所持品検査が有効とされる要件として、①検査が合理的理由に基づいて行われること、②検査の方法ないし程度が妥当なものであること、③制度として職場従業員に対して画一的に実施されていること、④就業規則等の明示の根拠に基づいて行われていること、以上4つを満たす必要があります。
よって、本件がこの4つの要件を満たしているのであれば、会社は職場秩序維持のため、所持品検査を指示することができ、社員はこれを受ける義務があります。社員がこれを拒む場合は業務命令違反となります。
所持品検査は本人の同意がなくても強制できるか悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「残業は強制できるか?」については、こちらをご覧ください。