労働法務
2022.11.28
飲酒運転で事故。逮捕。免許取り消し。解雇できるのか?
- 当社は観光バス事業を営んでいますが、運転手である社員が職場外で飲酒運転で事故を起こし、逮捕され、運転免許取り消しになりました。この社員を懲戒解雇しますが、よろしいですよね?
懲戒解雇は、有効とされる可能性が高いです。
私生活上の非行の全てが懲戒処分の対象となるわけではありません。日本鋼管事件(最判昭49・3・15)では、「従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から綜合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」と判示されています。
本件を各要素別に会社の社会的評価に及ぼす影響がどの程度であるかを検討すると次のようになります。
要素
会社の社会的評価に及ぼす影響
1.
当該行為の性質、情状
飲酒運転であり
相当重大
2.
会社の事業の種類・態様・規模
観光バス事業であり
相当重大
3.
会社の経済界に占める地位
不明
4.
経営方針
不明
5.
その従業員の会社における地位・職種
運転手であり
相当重大
6.
その他の事情
不明
大手の貨物自動車運送事業者Yのセールスドライバーとして勤務していたXの酒気帯び運転事実が発覚したため、就業規則に定める懲戒事由である「業務内、業務外を問わず飲酒運転及び酒気帯び運転をしたとき」に該当したとしてXを懲戒解雇したヤマト運輸(懲戒解雇)事件(東京地判平19・8・27)では、懲戒解雇処分を有効と判断されています。判断理由は次の通りです。「Yが大手の貨物自動車運送事業者であり、XがYのセールスドライバーであったことからすれば、Yは、交通事故の防止に努力し、事故につながりやすい飲酒・酒気帯び運転等の違反行為に対しては厳正に対処すべきことが求められる立場にあるといえる。したがって、このような違反行為があれば、社会から厳しい批判を受け、これが直ちにYの社会的評価の低下に結びつき、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれがあり、これは事故を発生させたり報道された場合、行為の反復継続等の場合に限らないといえる。このようなYの立場からすれば、所属のドライバーにつき、業務の内外を問うことなく、飲酒・酒気帯び運転に対して、懲戒解雇という最も重い処分をもって臨むというYの就業規則の規定は、Yが社会において率先して交通事故の防止に努力するという企業姿勢を示すために必要なものとして肯定され得るものということができる」
飲酒運転の場合の懲戒処分の程度は、会社の社会的評価に及ぼす影響などの状況によりけん責処分から懲戒解雇処分まで幅広く考えられます。社会保険労務士や弁護士に相談し処分を決定することをおすすめします。
飲酒運転の懲戒処分で悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「社員が傷害容疑で逮捕された場合、懲戒解雇してよいか?」については、こちらをご覧ください。