労働法務
2022.12.26
恋愛原因で社員同士、けんかが発生。ケガした社員に会社は責任を負うのか?
- 職場内で恋愛関係のもつれが原因で社員Aと社員Bが殴り合いのけんかをして、社員Aがケガをしました。社員Aは「職場内でのケガなので会社に責任がある。会社に責任をとってもらう」と主張しています。会社は責任を取らなくてはないのですか?
原則として、会社は責任を取る必要はありません。
職場内でのけんかは、社員個人間の問題ですので、原則として会社は責任を負う必要はありません。
ただし、場合によっては、会社は使用者責任(民法715条)及び安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負う場合がありますので注意することが必要です。
佃運輸事件(神戸地裁姫路支部判平23・3・11)では、「事業執行行為と時間的場所的な関連性は満たしているということはできるけども、暴行が生じた原因と事業執行行為との密接関連性があるということはできないから、会社の事業執行行為についてなされていたということはできない」として使用者責任を否定しました。同事件では、「小中学校ではあるまいし、・・・会社は従業員間の暴力抑止義務のようなものを負っているとは認めがたい」とし、「暴行の発生は会社にとって予見可能性の範囲外であり、したがって、会社はかかる結果回避義務を負わない」と判断されました。
本件は、けんかの原因が恋愛関係のもつれですので明らかに業務執行行為と密接関連性がありませんが、けんかの原因が事業執行行為と密接関連性がある場合は、使用者責任を問われます。
佃運輸事件(神戸地裁姫路支部判平23・3・11)では、「本件暴行事件以前から、〇〇と〇〇が顔を合わせれば暴力沙汰になっていたか、またはそうなりそうであったという状況が存在したのであれば、会社にとって本件暴行の発見は予見可能であり、したがって、両者の接触を避けるような人員配置を行う等結果回避義務があった」とされています。職場内でけんかが発生することが予見可能である場合には会社は例外的に安全配慮義務を負担する場合があることを判示しています。
どうすればいいのか?
まず、会社は、いかなる理由があろうとも暴力行為を一切許さず、厳格な処分を下す姿勢を社内に明確に示すことが必要です。暴力行為は犯罪であることを研修等を通じて社内で啓蒙してください。
けんかが発生することが予見されるにもかかわらず、放置していた場合には、安全配慮義務違反を問われかねません。暴力をともなうけんかが発生することが予見される場合には、上司による注意・指導を行うことが必要です。場合によっては、両者の接触を避けるような配置転換等の措置をとることも必要です。
社内でけんかが発生し、対応に困った場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「職場内で不倫した社員を懲戒解雇できるのか?」については、こちらをご覧ください。