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労働法務

2023.03.16

整理解雇は、どうすれば有効になるのか?

tag:
解雇 / 整理解雇 / 人員削減 / 人件費
当社は製造業です。業績悪化に伴い、やむを得ず、人件費のコスト削減を断行しなければならなくなりました。一定数の従業員を整理解雇するつもりです。いいですよね?

整理解雇は、無効とされる可能性が高いです。 

整理解雇とは、企業が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇です。整理解雇は、労働者の非違行為や私傷病などの労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく、会社の経営上の理由による解雇である点に特徴があり、解雇権濫用法理(労契法16条:解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする)の適用において厳しく判断する必要があります。 

裁判所は、整理解雇について4要件(要素)を考慮することで、その有効性を判断しています。 

 

①人員削減の必要性の程度・・・会社の合理的運営上、人員削減の必要性が認められること 

②解雇回避努力義務の履行・・・解雇を回避するための経営上の努力を尽くしていること 

③被解雇者選定の合理性・・・整理解雇の対象者を恣意的ではなく、客観的・合理的な基準で選定すること 

④手続の妥当性・・・会社の状況や経緯、人選基準等や解雇の時期・規模について、従業員に十分な説明をし、協議していること 

 

 整理解雇は、責任のない従業員に対して、会社が一方的に行うものなので、いきなり整理解雇を行うのではなく、まずは解雇を回避する努力をどこまで尽くしたのかが大きなポイントとなります。解雇回避努力の具体策としては、コスト削減、会社資産の売却、役員報酬減額、採用活動の停止、残業抑制、昇給停止、賃金カット、賞与の減額または不支給、一時帰休、希望退職者の募集等が挙げられます。これらの対策を尽くしていないと、当該整理解雇は無効となる可能性が極めて高くなります。 

 労働大学事件(東京地判平13517では、経営不振を理由とした整理解雇が無効、ワキタ事件(大阪地判平12121では、英文タイピストの余剰人員を理由とした整理解雇が無効、泉州学園事件(大阪高判平23715では、学校法人が行った経営不振を理由とした整理解雇が無効、東亜外業事件(神戸地判平231114では、工場休止に伴う整理解雇が無効、日本通信事件(東京地判平24229では、支店閉鎖及び部門廃止に伴う整理解雇が無効となりました。これらの裁判の解雇無効となった理由は、整理解雇4要件(要素)の履行が不十分であったことです。 

 本件では、経営上の必要性はあるかもしれませんが、人件費削減を先行する結果、整理解雇に踏み切ることは、整理解雇の4要件(要素)の「解雇回避努力義務」を否定されることなり、解雇権濫用となる可能性が極めて高いといえます。 

  

どうすればいいのか?  

整理解雇については、拙速な行動をとるのではなく事前に時間をかけて準備することが重要です。まずは、人員整理が必要かどうかを会社の財政状態、資産状況を踏まえて、顧問税理士等と検討することが必要です。決算書等従業員に対して人員整理の必要があることについて数値で示すことができる資料を作成することが必要です。従業員がやむを得ないと思えるレベルまでの経営成績を数値で示すことは人員整理を果たすうえで有効に働きます。 

 整理解雇に当たって、これを回避するために他の手段を講じたか否かが問われます。他の手段を講じず、漫然と整理解雇すると、解雇回避努力義務違反を理由に整理解雇が解雇権の濫用として無効となるリスクがあります。役員報酬カット、採用の停止、残業停止、配置転換、出向、割増退職金による自主退職など、整理解雇を回避する努力が求められます。こうした解雇回避努力を尽くしたけれども人員整理に踏み切らざるを得なかったことを文書で示すことができるようにしておくことが肝要です。 

 被解雇者の選定基準、具体的人選が合理的かつ客観的でなければなりません。労働組合に加入している者だけを対象としたり(合理性を欠く選定)、使用者の好みだけで被解雇者を選定したり(客観性を欠く選定)すると、整理解雇が解雇権の濫用として無効となるリスクがあります。この点においてもできる限り数値化をすることが客観性を示すことに役立ちます。被解雇者の選定が人事考課成績等の数値に基づくといったことも数値化といえます。 

 人員整理に当たっては、慎重に進め、その時期が来たら、最初に社長から整理解雇が必要であることを十分に説明し、従業員の理解を得る必要があります。その際、今まで経緯と現状について真摯に説明します。 

整理解雇に踏み切る前には「希望退職の募集」をすることも方策です手続きの妥当性の判断では希望退職の募集は非常に重要視されます 

希望退職の募集を行ったら個人面談を行うことを推奨します。個人面談では、希望退職のメリットを伝えてください。年次有給休暇は買取すること、失業保険は会社都合となること、就職をあっせんすること、退職金の割増などです。個別面談でじっくりと時間をかけて希望退職を募ることが重要です。 

最終的に希望退職の募集で予定人員数に満たない場合に、やむなく整理解雇に踏み切ることになります。会社の経営が苦しいからといって簡単に「整理解雇」に踏み切ることは訴訟リスクなど大きな紛争に発展するおそれがあります 

 

 整理解雇を検討したい場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。

「能力不足の社員を解雇するために、どうしたらいいのか?」については、こちらをご覧ください。

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