労働法務
2024.05.13
年次有給休暇
年次有給休暇とは
年次有給休暇の制度は、労働者の健康で文化的な生活の実現に資するために、一定日数の休暇を有給で保障する制度です。
雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません(労基法39条1項)。さらに、1年6ヵ月以上継続勤務した労働者に対しては、以下のとおり有給休暇を与えなければならないと定められています。
年次有給休暇の時季変更権
会社は、従業員が請求(指定)した時季に年休を付与しなければなりません。ただし、従業員が請求(指定)した時季に「事業の正常な運営を妨げる場合」においては、その時季の年休取得を拒否して、他の時季に年休を取得させることができます(労基法39条5項)。
従業員が年休の時季を指定する権利を「時季指定権」、会社が従業員の指定した時季の年休の付与を拒否する権利を「時季変更権」といいます。
従業員から突然時季指定がなされると、代替要員の確保の都合がつかなくなるなど、業務上の支障が生じることがあります。特に、従業員が、会社との調整を経ることなく、長期かつ連続の年休の時季指定をした場合、会社の業務に著しい支障が生じることになります。
このような事態に対応するために会社には時季変更権が認められていますが、時季変更権の要件である「事業の正常な運営を妨げる場合」の内容を知らないまま、軽々しくこれを行使していると、時季変更権が無効であると判断されます。場合によれば、時季変更権の行使が違法であるとして損害賠償の対象となるリスクもあります。
従業員がその年に年休を取得しきれずに年休日数が多く残ることは、労務管理上問題があります。年休は、2年の時効(労基法115条)にかからない限り、その年度だけでなく、翌年度も行使できますが、年休日数がたまりすぎると、長期かつ連続の年休申請という結果を招いてしまいます。
従業員が退職時にたまった年休を一斉に行使することがあります。この場合には、時季変更権を行使しようにも、退職予定日を超えて時季変更権は行使することができません。したがって、退職時の年休は法的に認めざるを得ないことになります。結果的に業務の引継ぎが行われないなどの支障が生じることもあります。 このようにならないためにも、普段から、年休を取得しやすい職場環境を構築する必要があります。