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労働法務

2025.03.19

未払残業代の時効が3年になった件について

tag:
残業代 / 未払い / 残業手当 / 時効 / 給与トラブル

目次

  1. はじめに
  2. 未払残業代とは?
  3. 未払残業代の時効が3年になった背景
  4. 時効が2年から3年に延長された影響
  5. 未払残業代を請求する方法
  6. 証拠を集める重要性
  7. 残業代の計算方法
  8. 企業側の対応策
  9. 未払残業代に関するよくある質問
  10. まとめ

1. はじめに

2020年4月1日から、未払残業代の時効が従来の2年から3年に延長されました。これにより、従業員が過去の未払残業代を請求できる期間が長くなり、企業側にとってはリスク管理がより重要になっています。

本記事では、未払残業代の基礎知識や時効変更の背景、請求方法、企業側の対応策などを分かりやすく解説します。

2. 未払残業代とは?

未払残業代とは、会社が従業員に支払うべき残業代を適正に支払っていないケースを指します。例えば、以下のような状況が考えられます。

  • サービス残業:労働時間としてカウントされず、賃金が支払われない。
  • 残業時間の過小申告:実際には1時間残業したのに、30分しか記録されない。
  • 固定残業代制度の乱用:本来の残業代を超える労働時間が発生しても、追加の賃金が支払われない。

このようなケースでは、従業員は未払残業代を請求する権利があります。

3. 未払残業代の時効が3年になった背景

2020年の労働基準法改正により、未払残業代の時効が2年から3年に延長されました。この変更は、以下のような背景から実施されました。

  • 働き方改革の推進:長時間労働の是正や、労働者の権利を守るため。
  • 民法改正の影響:民法の債権の消滅時効が5年に変更されたことを受け、労働基準法も一部見直された。
  • 実態に即した対応:未払残業代の請求には証拠収集や手続きが必要であり、2年では十分な準備ができないケースがあったため。

4. 時効が2年から3年に延長された影響

時効延長の影響は、労働者・企業の両方に及びます。

労働者側の影響

  • より長い期間の未払残業代を請求できる。
  • 証拠を集める期間が増え、請求の準備がしやすくなる。

企業側の影響

  • 追加の支払いリスクが増加。
  • 労務管理の強化が求められる。
  • 過去の未払残業代請求が増加する可能性がある。

5. 未払残業代を請求する方法

証拠(タイムカード、メール履歴、給与明細など)を集めた後に、未払残業代を請求するには、以下の手順を踏むことが一般的です。

  1. 会社に直接請求する
  2. 労働基準監督署に相談する(是正勧告してもらう)
  3. 弁護士等に相談して、裁判や労働審判を利用する

6. 証拠を集める重要性

未払残業代を請求する際、証拠がなければ会社側が支払いを拒否する可能性があります。以下のような証拠を集めることが重要です。

  • タイムカードや勤怠記録
  • 給与明細(残業代が適正に支払われているか確認)
  • 業務メールやチャットの履歴(勤務時間を示すもの)
  • 日報やスケジュール管理ツールの記録

7. 残業代の計算方法

残業代は、おおむね以下の計算式で求められます。

残業代 = 基本給 ÷ 1カ月の所定労働時間 × 割増率 × 残業時間

  • 割増率は、通常の残業は25%、深夜残業は50%、休日労働は35%が基本。
  • 例えば、時給1,500円の人が20時間の残業をした場合、
    1,500円 × 1.25 × 20時間 = 37,500円が残業代となります。
  • 前述の額が支払われてなければ、未払残業代が発生しています。

8. 企業側の対応策

企業は、未払残業代の発生を防ぐために以下の対策を講じることが求められます。

  • 適切な勤怠管理を行う
  • 固定残業代制度の見直し
  • 労働基準法を遵守する教育を実施する
  • 適正な給与計算を行うシステムを導入する

9. 未払残業代に関するよくある質問

Q1: 未払残業代を請求したら会社から嫌がらせを受けるのでは?

A: 労働基準法では、未払残業代の請求を理由に解雇や嫌がらせを行うことを禁止しています。

Q2: 過去に退職した会社の未払残業代も請求できる?

A: 可能です。ただし、退職後も時効(3年)は進行するため、早めに請求しましょう。

Q3: アルバイトやパートでも未払残業代を請求できる?

A: 正社員でなくても労働基準法が適用されるため、請求は可能です。

10. まとめ

未払残業代の時効が3年に延長されたことで、労働者はより多くの未払残業代を請求できるようになりました。一方で、企業側は適切な労務管理を行い、リスクを未然に防ぐ必要があります。

労働者は証拠をしっかり集め、適正な手続きを踏んで請求を行いましょう。企業は未払残業が発生しないよう、管理体制を強化することが求められます。

未払残業代について不安がある場合は、専門家や労働基準監督署に相談することをおすすめします。


この記事の監修

社会保険労務士法人堀下&パートナーズ
社会保険労務士 堀下 和紀

お客様に寄り添い、法律知識だけでなく相手の立場を理解し、本当に求められる最適な解決策をご提供することを信念としています。
また、特定社会保険労務士として労働トラブルの解決に尽力し、経営者の経験を活かして実務と理論の両面からサポート致します。

略歴
1971年 福岡県生まれ
1995年 慶応義塾大学商学部卒業 明治安田生命保険相互会社勤務
    (銀座支社・契約管理部・沖縄支社~1999年)
1999年 エッカ石油株式会社勤務
2005年 堀下社会保険労務士事務所
2021年 社会保険労務士法人 堀下&パートナーズ設立

主な書籍
「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版社)
社労士・弁護士の労働トラブル解決物語(労働新聞社)
他 14冊

社会保険労務士 堀下 和紀

主な活動

セミナー講師/テレビ出演/書籍、記事執筆

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