労務管理
2024.07.17
昇給とは?何を基準にいつ実施すべき?昇給相場や昇給率、ベースアップと定期昇給の違い、期待によるメリットを解説
昇給とは?会社は何のために昇給し、どのような基準でいつのタイミングで昇給すべき? 昇給相場や昇給率、ベースアップと定期昇給の違いや、昇給によるメリットを解説!
昇給とは、従業員の給料が一定の基準や条件に応じて上昇することを指します。
企業は昇給を通じて従業員のモチベーションを維持し、労働市場での競争力を高めます。また、昇給には定期昇給と臨時昇給、ベースアップ(ベア)などの種類があり、それぞれの違いとその効果を理解することが重要です。
この記事では、昇給の基本知識から具体的な昇給制度、計算方法、さらに昇給がもたらす企業と従業員へのメリットについて詳しく解説していきます。
目次
1.昇給の基本
昇給の基準には業績、勤続年数、スキルの向上などがあり、計算方法も様々です。
定期昇給は多くの企業で年に一度実施され、労働組合と経営者で協議することが一般的です。
定期昇給の仕組みのある会社では、年に一度、昇給を実施することが一般的です。
また、臨時昇給や特別昇給は、特定の要因(例えば、業績向上や重要なプロジェクトの成功など)に基づいて行われます。これにより、従業員の業績を評価し、適切な報酬を提供することが求められます。
当然ながら勤続年数に比例して、毎年、社員従業員の年齢も上がります。生活スタイルや家族構成にも変化が見られてきます。入社した時の給与では生活水準の維持が難しい状況となるケースも想定されます。このように、社員個人のライフステージの変化に対応することも昇給の目的のひとつです。
2.昇給制度
昇給は企業の給与体系における重要な要素です。その主な目的は、社員の士気向上、能力向上、および長期的な労働意欲の維持です。企業が昇給制度を設ける際には、公平性と透明性が重要であり、一貫した評価基準を設ける必要があります。
昇給制度が整備されている企業では、社員は自分の努力が適切に評価されるという安心感を持ち、高いモチベーションで業務に取り組むことができます。
3.会社が昇給するタイミングはいつ?
昇給とは、一定の基準や条件に基づいて従業員の給与が上昇する仕組みです。
通常、昇給は年1回または半年に1回行われ、これにより、従業員の生活水準が向上し、労働意欲が高まり、高い業績を維持するための重要なインセンティブとなります。
さらに、昇給は従業員にとって将来のキャリアパスを描く際の重要な要素となり、企業と従業員双方にとってメリットが多いと言えます。
4.平均的な昇給額とは
その基準は企業ごとに異なります。基礎知識として覚えておくべき昇給の要素には、勤続年数、業績評価、役職、資格取得などが含まれます。また、昇給の相場は企業の業績や市場動向にも大きく影響されます。昇給には基本給の増加だけでなく、特別手当やボーナスの支給も含まれることがあります。
5.昇給制度の種類と特徴
昇給制度にはいくつかのタイプがあり、それぞれに独自のルール、決め方があります。一般的な昇給制度として、定期昇給、臨時昇給、自動昇給、考課昇給、普通昇給、特別昇給などがあります。これらの制度は企業の方針や業界の特性や慣習によって採用される制度は異なりますが、いずれも社員の努力や成果を反映させるためのものです。
また、大手企業の場合は、中小零細企業と比較して様々な昇給の制度があり、独自性のある昇給の仕組みを設けていることがあります。以下に代表的な日本の昇給制度を紹介します。
*定期昇給とは
定期昇給は多くの場合、1年に一回実施されるもので、勤続年数や年齢に応じて一定額が自動的に増えることを指します。この制度は計画的で安定した給与の増加を提供し、従業員の安心感を高めます。
1970年代以降の日本的経営の3つの特徴として、企業別組合、終身雇用、年功序列制が挙げられました。近年では終身雇用や年功序列という考え方を見直す会社も増えています。
勤続年数が長ければ、無条件で昇給するといった従来の昇給制度から、年齢や経験を問わず実力を重視する傾向も見られるため、今後は従来型の定期昇給制度を廃止する動きが増加する可能性が考えられます。
*臨時昇給とは
臨時昇給は特定の事象(例えば、個別の業績やスキルの向上など)に基づいて、一時的に給与が上がることを指します。これは企業が優れた成果を出した従業員への即時評価として利用されます。
なお、臨時昇給はその支給時期や支給対象者、いくら支給する等があらかじめ明確になっておらず、臨時的に行われることが多く、会社業績が好調のときや、従業員が突出した成果や業績を達成した場合など、さまざまな理由で行われます。
*自動昇給とは
自動昇給とは、特定の基準(例えば、資格取得や一定の業務遂行など)や要件が満たされると自動的に給与が増加する制度です。この制度は個々の従業員の努力を正当に評価しやすい特性を持ちます。
*考課昇給とは
考課昇給は、人事評価制度に基づいて実施される昇給です。この制度では、評価シート等を利用した定期的な考課面接や業績評価を通じて個別に給与が査定されます。公平性と透明性が求められる制度ですので、聞くためのスキルとして傾聴を行ったり、考課の結果についての説明責任を果たすことも非常に大切な要素となります。
*普通昇給とは
普通昇給は、一般的な昇給のことを指し、企業全体での給与改定を伴います。業績や経済状況に応じて幅広く実施されることが多く考え方は会社によって様々です。
*特別昇給とは
特別昇給は、他の従業員より特殊な職務に従事する場合や、期待を大幅に上回る格別の業績をなどに対して行われる特別な昇給です。この制度は、従業員のモチベーションを大いに引き立てる効果があります。一般的には、普通昇給と区別するために使われることが多くあります。
6.昇給とその他の制度の違い
会社には昇給制度以外にもさまざまな人事制度があります。昇給、昇格、ベースアップ(ベア)、昇進など、それぞれ異なる目的と基準を持っています。本章では、これらの違いを明確にし、どういった状況で適用されるべきかを説明します。
*昇給と昇格の違い
昇給と昇格は一見似ていますが、目的と基準が異なります。昇給は給与の増加を指し、その基準は昇給は個人の業績や貢献度、勤続年数などに応じて個別に給与が上がることを指します。具体例として、年間業績評価で優れた成績を収めた社員が特定の金額や割合で給与をアップすることが挙げられます。
一方、昇格は役職の上昇を指し、新しい職責や権限が与えられます。例えば、主任から課長へと昇格する場合、管理職としての責任が増え、スタッフの管理やプロジェクトの監督などが求められます。昇格には通常、一定の業績やリーダーシップ能力が求められ、昇給と異なり必ずしも給与が直ちに増えるわけではありません。しかし、昇格によって結果的に昇給も伴うことが多いです。従って、昇給は個人のパフォーマンスに対する即時的な報酬、昇格は長期的なキャリア展望と捉えることができます。
また、職能資格制度を導入している会社においては、等級が上がることを指すケースもあります。
昇格によって等級が上がり、職務レベルのステージが変化することで求められるパフォーマンスや役割や職責が大きくなり、それに比例するように昇給が昇格とセットになって年収がアップするようなイメージです。
*昇給とベースアップ(ベア)の違い
昇給とベースアップ(ベア)もまた異なる概念です。
ベースアップは労使交渉によって全社員の給与を一律に引き上げるもので、景気や物価変動に対応するために行われます。
ベースアップは企業全体または特定の部門における全従業員の基本給を一律に引き上げる制度です。ベースアップは主に労働組合と経営者の交渉によって決定され、経済状況や物価上昇を反映することが目的です。例えば、年間インフレ率が高い場合、全社員に対して給与を一律に数パーセントを目安に引き上げることが行われます。この違いにより、昇給は個々の努力や成果に対する評価として機能し、ベースアップは経済環境や生活費の増加に対する調整として機能します。
一方で、ベースアップの効果として全従業員の基本給が一定割合で底上げされることにより、ボーナスや退職金の計算にも影響を及ぼす場合もあります。ひとたび金額をアップした後は、理由なく引き下げることはそう簡単な話ではありません。経営に非常に大きな影響を及ぼす恐れもあるため、ベースアップに慎重な姿勢をとる企業も少なくありません。
春闘とは?
例年3月~4月にになるとニュース等で「春闘」「労働組合」「交渉」などのワードをご覧になったことがあるのではないでしょうか。春闘って言葉は聞いたことがあるけど、ハッキリ何かは分からないという方も多いと思います。
春闘は、 多くの企業にとっての新年度となる4月に向かって行われます。
労働組合と会社間で春季に行う「賃上げ」や「労働条件の改善」等をテーマとした労使間交渉のプロセスです。日本の企業において、労働組合と企業側が年次交渉を行う制度です。具体的には、以下のような要素が含まれます。
1. 「賃金交渉」 :労働者の賃金やボーナスの引き上げを求める交渉が行われます。
2. 「労働条件改善」 :労働時間の短縮、休暇制度の改善、労働環境の向上など、労働者の待遇や
労働条件に関する改善案が議論されます。
3. 「労働者の権益保護」:労働者の権益を守るため、労働組合が企業側に対して要望を出します。
2024年の昇給額の発表はいつ・いくらになる見込み?
経団連によると、2023年の春闘では、従業員数500人未満の中小企業における賃上げ率は、2022年から1.08ポイント増の3.00%でした。
大手企業を含む全体の賃上げ率は、2022年から2.27%ポイント増の3.99%でした。
2023年の妥協額が加重平均で1万3,362円となり、前年2022年の7,562円と比較すると、1.5倍以上の伸び率となりました。
このような伸び率は、1993年以来、30年ぶりの高水準です。
また、製造業と非製造業との比較では、非製造業の方がアップ率・伸び率ともに高く、コロナ禍の影響が縮小したサービス業や小売業などの回復が目立ちます。
なお、経済の回復、物価上昇、全国的な人手不足、人材確保などの様々な要因から、賃上げの流れが広がっており、基本給を底上げするベースアップ(ベア)も有効な選択肢として検討されています。
2024年の春闘においては、連合が掲げた「5%以上」という目標を業績好調な大手企業がけん引役となって、中小企業や小規模企業にも賃上げの動向に影響を与えています。
これらの背景から、2024年にかけての賃上げの動向が非常に注目されています。
(一社)日本経済団体連合会 2023年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/058.pdf
(一社)日本経済団体連合会 2023年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/054.pdf
*昇給と昇進の違い
昇給と昇進は異なりますが相互に関連する概念です。昇給は個人の基本給与が上がることを指し、主に業績評価や勤続年数、スキルアップに応じて行われます。
一方、昇進は職務や役職が上がることを指し、新たな責任や権限が伴います。例えば、一般職であった担当者からチームリーダーや管理職へ昇進する場合、その職務内容や責任範囲が大きく変わります。昇進には通常、リーダーシップスキルや専門知識、経験が求められます。昇進すると、それに伴って役職手当の支給や、昇給が行われることが多くみられますが、昇進そのものが直接的な給与増加を意味するわけではありません。従って、昇給は個々の努力や成果に対する評価として現れ、昇進はキャリアパスの一環として新たな職位や役職を得ることを意味します。この違いを理解し、適切に使い分けることで、会社はより適切な人材管理と従業員のモチベーション向上を図ることができます。
7.昇給制度のメリットとデメリット
昇給制度は会社と従業員の双方にとって重要な人事制度ですが、メリットとデメリットが存在します。適切に運用されれば、従業員のモチベーションを高め、企業の業績向上につながります。しかし、評価基準のあいまいさや管理の手間、評価を実施することに伴う労力が問題になることもあります。本章では、昇給制度のメリットとデメリットを詳しく解説します。
*昇給がもたらすメリット
昇給制度の最大のメリットは、従業員のモチベーションを向上させることです。給与が増えることで従業員は自身の努力や成果が正当に評価されていると感じ、さらなる向上を目指そうとする意欲が高まります。また、給与の増加は生活水準の向上につながり、従業員の満足度を高める要素ともなります。さらに、優れた昇給制度を持つ企業は、労働市場での競争力を高め、優秀な人材を引き付けることができます。加えて、従業員が長く在籍することで、会社としての安定性も向上します。このように、昇給は企業全体のパフォーマンスを向上させる大きな要素となります。
*会社側のメリット
会社側にとって昇給制度のメリットは多岐にわたります。まず、優れた昇給制度を導入することで、従業員のモチベーションが向上し、生産性が増すことが期待されます。モチベーションの高い従業員は、業務への取り組みが積極的となり、企業の業績向上に寄与します。また、昇給制度は労働市場における企業の魅力を高め、優れた人材を引き付ける手段となります。これにより、人材の確保と定着が促進され、組織としての安定感が増します。さらに、従業員のスキルや知識の向上を促すため、継続的な研修や教育プログラムの効果も相まって、企業全体の競争力が強化されます。このように、昇給制度は会社の成長を支える重要な要素です。
*昇給制度の課題とデメリット
昇給制度にはメリットがある一方で、課題やデメリットも存在します。まず、評価基準があいまいであると、公平性が確保されず、従業員の不満が募りかねません。また、人事考課に多大な時間と労力がかかる点も問題です。こうした課題を解決するためには、評価基準の明確化や、評価システムの効率化が求められます。
あいまいな評価基準の問題
昇給制度における評価基準があいまいであると、従業員の不満が生まれやすくなります。評価基準が不明確な場合、昇給の決定が主観的になり、公平性が欠ける恐れがあります。これにより、努力が正当に評価されないと感じる従業員が増え、モチベーションの低下や離職率の上昇につながる可能性があります。対策として、企業は透明性のある評価基準を設定し、従業員に明確に伝えることが重要です。また、評価プロセス自体も定期的に見直すことで、公平性を維持する努力が必要です。
人事考課の手間
昇給制度を運用する上で、人事考課に多大な時間と労力がかかる点も問題となります。評価制度が複雑である場合、管理職や人事担当者は、評価を実施したり、定期面談をしたりと多くの時間を費やさなければならず、その結果、他の業務に手が回らなくなってしまうことがあります。これにより、評価そのものが不正確になり、従業員の不満を引き起こす可能性もあります。この問題を解決するためには、評価システムの効率化やデジタルツールの導入が有効です。例えば、クラウドベースの人事管理システムを活用することで、評価プロセスを自動化し、時間と労力を節約することができます。
8.昇給の基準と計算方法
昇給は従業員のモチベーションを高め、業績を向上させるための重要な制度です。しかし、その基準と計算方法が明確でないと、公平性が損なわれることもあります。この章では、昇給の評価基準と計算方法について詳しく解説し、会社がどのようにして適切な昇給をいつ行うべきかについて説明します。
*昇給の評価基準とは
昇給の評価基準は、従業員のパフォーマンスを正確に評価するための重要な要素です。一般的な評価基準には、業績目標の達成度、スキルの向上、勤続年数、チームへの貢献度、会社の財政状況などが含まれます。これらの基準は企業ごとに異なるため、企業は自社の方針や目標に合わせてカスタマイズすることが求められます。例えば、業績評価を主とする企業では、売上目標の達成度やクライアントの満足度が重要視されることが多いです。一方、勤続年数を重視する企業では、長期間にわたる貢献が評価されます。透明性と公平性を持たせるために、評価基準は予め明確に定義し、従業員に周知することが重要です。
*昇給率の計算方法
昇給率の計算は、通常基本給を基準に行われます。一般的な計算方法としては、「昇給前の基本給×昇給率=昇給額」が使われます。例えば、基本給が30万円で昇給率が5%の場合、昇給額は30万円×0.05=1万5千円というイメージです。計算方法は会社ごとに異なることが多く、業績や評価結果などを考慮に入れて昇給率を決定する企業もあります。また、昇給率は経済状況や業界標準に基づいて決定されることが多いため、他企業との比較も重要です。適切な昇給率を設定することで、企業は従業員のモチベーションを高め、離職率を減少させることができます。
*昇給金額の計算例
昇給金額の計算はシンプルである一方、正確さが求められます。具体例を挙げると、基本給が25万円の従業員が5%の昇給を受ける場合、その昇給額は25万円×0.05=1万2500円です。この結果、昇給後の基本給は25万円+1万2500円=26万2500円となります。
*昇給がいつ行われるか
昇給が実施されるタイミングは企業ごとに異なりますが、一般的には年度末や半年ごとに行われます。これには、年度末に業績評価が行われ、その結果を基に昇給が決定されるパターンが多いです。また、企業の財務状況や経済動向も影響を与えるため、景気が良い場合には昇給が行われやすく、逆に景気が悪い場合には昇給が見送られることもあります。さらに、高いパフォーマンスを示した従業員に対しては、臨時昇給が行われることもあります。このように、昇給のタイミングは柔軟に設定されており、会社の戦略や状況に応じて変わることが多いです。
*昇給の上限・下限とは
昇給には昇給額に上限と下限が設けられていることが多くあります。その他にもストップ年齢を設ける制度もあります。上限や下限を設定するのは、会社の財政的観点から持続可能な昇給制度のためにも重要な点です。上限は、給与が急激に増加するのを防ぎ、財務バランスを保つために設定されます。例えば、年度ごとに昇給率の上限を10%とする企業もあります。一方、下限は最低限の昇給額を保証するもので、通常の経済インフレ率や生活コストの上昇に対応するために設けられます。例えば、最低昇給額を1,000円としたり、なし(0円)とする企業もあります。このように、昇給の上限と下限を設定することで、企業は公平かつ継続的な昇給制度を提供することができます。
9.昇給額の相場と基準
昇給額の相場と基準は、企業の規模や業界、地域、そして従業員の年齢や勤続年数によって大きく異なります。大企業と中小企業では給与体系自体が異なることが多く、昇給額もそれに応じて変わります。また、年齢や勤続年数に応じて昇給額に違いが出ることも一般的です。これらの要素を考慮に入れることで、企業は適切な昇給制度を設計でき、従業員のモチベーションと満足度を高めることができます。
*大企業と中小企業の昇給額の違い
大企業と中小企業では、昇給額に大きな違いがあることが多いです。大企業は財務基盤が強固であり、業績も安定しているため、昇給額が高い傾向にあります。例えば、大企業では年平均の昇給額が3%から5%程度であることが一般的です。一方、中小企業では財務的な制約が大きく、昇給額も控えめになることが多いです。中小企業では年平均の昇給額が1%から3%程度とするケースも少なくありません。ただし、中小企業でも業績が非常に好調である場合や、特定のスキルや業績が評価される場合には、大企業と同等またはそれ以上の昇給が実現することもあります。企業規模にかかわらず、透明性と公平性を持った昇給プロセスが重要です。
*昇給の年齢と勤続年数による違い
昇給額には、年齢や勤続年数が影響を与えるケースも多いです。一般的な国内企業においては若手社員よりも、中堅やベテランの社員が昇給額で優遇される傾向があります。例えば、勤続年数が10年を超える社員は、その経験と貢献度が評価され、昇給額も高くなることが多いです。年齢とともに昇給の取扱いに違いがみられる背景には、生活費の増加や家庭の事情などが考慮されることが多いです。具体的な数字を挙げると、20代の若手社員では年間昇給額が1万から2万円程度であるのに対し、30代以降になると年間昇給額が2万から5万円程度に増えるケースがみられます。また、勤続年数が長いほど基本給も高く設定され、その分昇給額も多くなることが期待されます。このように、年齢や勤続年数に応じた昇給制度を設けることで、従業員のモチベーションを維持し、長期間にわたる貢献を促すことができます。
10.昇給がもたらす企業と従業員への影響
昇給は企業と従業員の双方に多大な影響を与える重要な制度です。適切な昇給によって、企業は従業員のモチベーションを向上させ、業績を高めることができます。また、従業員にとっては生活水準の向上や将来の安心感を得る手段となります。本章では、昇給が企業と従業員にもたらす影響について具体的に解説します。
*企業側の期待とそのメリット
企業にとって昇給制度の導入と実施は、従業員のモチベーション向上を期待する大きな要素です。適切な昇給は、従業員の業績向上や生産性の向上につながります。例えば、昇給があることで従業員は自分の努力が認められたと感じ、更なる努力を惜しまなくなります。加えて、昇給は人材の定着率を高める効果もあります。優れた昇給制度を持つ企業は、従業員が長期間にわたり勤務し続ける理由となり、離職率の低下を実現できます。さらに、昇給制度は企業の対外的なイメージを向上させ、優秀な人材の採用にも寄与します。全体として、昇給制度は企業の成長と発展を支える重要な柱と言えます。
*従業員の生活水準への影響
昇給は従業員の生活水準にも直接的な影響を与えます。具体的には、給与が増えることで生活費や家賃、教育費などの支出に対する経済的な余裕が生まれます。昇給によって生活水準が向上すれば、従業員の満足度も高まり、仕事への意欲も増します。さらに、定期的な昇給は従業員に将来の安心感を提供し、長期的なキャリアプランを描く上での支えとなります。例えば、定期昇給があることで将来のライフプランを立てやすくなり、長期的な資産形成もイメージしやすくなるでしょう。このように、昇給は単なる給与の増加以上の効果をもたらし、従業員の生活全般にわたるポジティブな影響を与える重要な要素となります。
11.昇給に関する手続きと注意点
昇給に関する手続きは企業と従業員双方にとって重要な作業であり、適切な方法で実施することが求められます。不適切な手続きや評価基準のあいまいさは、不満やトラブルを引き起こす可能性があります。本章では、昇給の手続き方法と書き方について詳しく説明するとともに、昇給制度の見直し方法についても触れていきます。
*昇給の手続き方法と書き方
昇給の手続きは、複数のステップを踏む必要があります。まず初めに、所属長や管理職が従業員の業績評価を行います。この評価には、業績目標の達成度、スキルアップ、貢献度などが考慮されます。次に、評価結果を基に昇給の決定が行われます。昇給が決定したら、正式な書類を作成する必要があります。この書類には、昇給の理由、昇給額、新しい基本給などが明示されていることが重要です。また、昇給書のフォーマットには、会社名、従業員の氏名、役職、評価期間などの基本情報も記載します。最後に、この書類を従業員に通知し、双方で確認・署名を行います。昇給の手続きは透明性と公平性を持たせることが肝心であり、個別面談などによる評価結果のフィードバックなどによる公正な評価基準の説明など双方向のコミュニケーションが求められます。
*昇給制度の見直し方法
昇給制度の見直しは、企業運営の中で定期的に行うべき重要なプロセスです。まず初めに、現行の昇給制度が会社の方針や従業員のニーズに合っているかを評価する必要があります。その際、業界の昇給相場や他企業の制度と比較することで、現行制度の強みと弱みを把握します。次に、従業員からのフィードバックを収集し、彼らがどのように昇給制度を評価しているかを確認します。必要に応じて、昇給基準や評価方法を見直し、透明性を高めることが求められます。また、見直しの際には、公平性を確保するために外部の専門家やコンサルタントの意見を取り入れることも有効です。最終的には、見直し結果を従業員に適切にコミュニケートし、新たな昇給制度がどのように実施されるのかを明確にすることで、従業員の理解と納得を得ることが重要です。このプロセスを通じて、企業は持続可能で透明性のある昇給制度を維持することができます。
12.昇給に関するFAQ
ここでは、昇給に関するよくある質問とその回答をまとめました。昇給に対する疑問や不安を解消するために役立つ情報を提供します。企業と従業員双方が昇給制度を理解し、適切に活用することが、成功する組織作りの鍵となります。
*昇給に関するよくある質問
*本文中で使用するキーワード
以下に、昇給に関するよくある質問とその回答を紹介します。これらの質問と回答を参考にすることで、昇給制度の理解が深まります。
1. 昇給の頻度はどのくらいですか?
昇給の頻度は企業によって異なりますが、一般的には年に1回または半年に1回行われることが多いです。多くの企業では年度末に業績評価を行い、その結果に基づいて昇給が決定されます。
2. どのような基準で昇給が決まりますか?
昇給の基準は様々で、業績目標の達成度、スキルの向上、勤続年数、チームへの貢献度の有無などが含まれます。また、企業全体の業績や経済状況も影響します。企業はこれらの評価基準を明確に定め、従業員に事前に説明することが重要です。
3. 昇給額はどのように決定されますか?
昇給額は基本給の一定割合(昇給率)や固定額で決定されることが多いです。例えば、昇給率が5%の場合、基本給が30万円であれば、昇給額は30万円×0.05=1万5千円になります。企業は昇給率や昇給額を業績評価や市場動向に基づいて設定します。
4. 昇給が見送られる場合はありますか?
はい、企業の業績が悪化した場合や経済状況が厳しい場合には、昇給が見送られることがあります。また、個々の従業員の評価結果が基準に達しない場合も昇給が見送られることがあります。このような場合には、企業は従業員に対して適切な説明を行うことが求められます。
このように、昇給に関する基本的な質問とその回答を理解することで、昇給制度の透明性が高まり、企業と従業員双方にとって有益なシステムになります。