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労務管理

2025.03.18

歩合制のメリットとデメリットについて

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給与制度 / 歩合制

目次

1. はじめに

2. 歩合制とは?

3. 歩合制のメリット

  • 3.1 収入が増えやすい
  • 3.2 モチベーション向上
  • 3.3 企業にとってのコスト管理がしやすい

4. 歩合制のデメリット

  • 4.1 収入の安定性が低い
  • 4.2 労働環境の悪化リスク
  • 4.3 チームワークの低下

5. 歩合制を導入する際の注意点

6. 歩合制に関する判例

  • 判例1:「日本郵便事件」(東京地方裁判所 2020年3月4日)
  • 判例2:「三菱電機事件」(大阪地方裁判所 2019年9月12日)
  • 判例3:「A保険会社営業社員事件」(最高裁判所 2015年6月23日)

7. まとめ


1. はじめに

労働形態にはさまざまな種類があります。その中でも「歩合制(出来高制)」は成果に応じて収入が変動する仕組みです。多くの業界で採用されています。本記事では、歩合制のメリットとデメリットについて詳しく解説し、どのような人や職種に向いているのかを説明します。また、歩合制に関する判例についても紹介し、実際に問題となった事例を踏まえて注意すべき点を考えます。

2. 歩合制とは?

歩合制とは、従業員の給与が業績や成果に応じて決まる給与形態のことです。例えば、営業職であれば契約を取った件数、販売職であれば売上高に応じて給与が決まることが一般的です。

歩合制には「完全歩合制」と「基本給+歩合制」の2種類があります。

  • 完全歩合制:基本給がなく、成果のみで収入が決まる
  • 基本給+歩合制:一定の基本給に加え、成果に応じて歩合が支給される

それぞれに特徴があり、職種や個人の働き方によって向き不向きがあります。それぞれのメリットやデメリットを考慮しながら導入しましょう。

3. 歩合制のメリット

3.1 収入が増えやすい

歩合制では、成果を上げるほど給与が増えるため、高収入を目指すことが可能です。特に営業職などでは、契約を多く取ることで月収が大幅に上がるケースがあります。

3.2 モチベーション向上

収入が自分の成果に直結するため、働く意欲が高まりやすいのも特徴です。成果を出せば出すほど収入が増えるため、仕事に対するやる気がアップします。

3.3 企業にとってのコスト管理がしやすい

企業側からすると、成果を出した分だけ給与を支払うため、人件費を抑えやすいというメリットがあります。特に景気が不安定な時期には、固定給を抑えることでリスクを軽減できます。

4. 歩合制のデメリット

4.1 収入の安定性が低い

歩合制では、成果が出なければ収入が大幅に減る可能性があります。特に景気や市場の影響を受けやすい業種では、月によって収入の変動が大きくなることもあります。

4.2 労働環境の悪化リスク

高収入を目指すあまり、過度な労働をしてしまうケースもあります。特に完全歩合制では、収入を増やすために長時間労働を強いられることがあり、心身の負担が大きくなる可能性があります。

4.3 チームワークの低下

歩合制では個人の成果が重視されるため、チームでの協力が難しくなることがあります。同僚との競争意識が強まりすぎると、情報共有が減り、職場の雰囲気が悪化することもあります。

5. 歩合制を導入する際の注意点

企業が歩合制を導入する場合、以下の点に注意が必要です。

  • 最低賃金の保証:完全歩合制の場合でも、最低限の生活ができる収入を保証する必要があります。また労働契約においては、最低賃金法などの法律を守ることが義務になっています。
  • 評価基準の明確化:どのような成果が給与に反映されるのかを明確にする必要があります。
  • 労働時間管理の徹底:労働契約の場合には、過労を防ぐために労働時間を適切に管理する必要があります。これは、労働基準法で定められています。
  • 公平な報酬体系の構築:特定の社員だけが得をする仕組みにならないようにすることが必要です。

6. 歩合制に関する判例

判例1:「日本郵便事件」(東京地方裁判所 2020年3月4日)

日本郵便の配達員が完全歩合制で働いていたが、最低賃金を下回る月があり、労働基準法違反が問題となった事件。裁判所は企業側に最低賃金の支払いを命じた。

判例2:「三菱電機事件」(大阪地方裁判所 2019年9月12日)

営業職の従業員が過度な労働を強いられ、結果として健康を害した事件。裁判所は企業側に過労防止の義務があったと認定し、賠償を命じた。

判例3:「A保険会社営業社員事件」(最高裁判所 2015年6月23日)

保険会社の営業社員が完全歩合制で働いていたが、歩合給がゼロの月が続いたため、雇用契約が労働基準法に違反していると訴えた。最高裁判所は企業側の責任を認め、最低限の収入保証が必要であると判示した。

7. まとめ

歩合制には、高収入が狙える、モチベーションが上がるといったメリットがある一方で、収入が不安定になりやすい、労働環境が悪化しやすいといったデメリットもあります。判例からも分かるように、最低賃金の保証や労働環境の整備が重要です。歩合制を検討している方は、メリットとデメリットを十分に理解し、自分に合った働き方を選択することが大切です。


この記事の監修

社会保険労務士法人堀下&パートナーズ
社会保険労務士 堀下 和紀

お客様に寄り添い、法律知識だけでなく相手の立場を理解し、本当に求められる最適な解決策をご提供することを信念としています。
また、特定社会保険労務士として労働トラブルの解決に尽力し、経営者の経験を活かして実務と理論の両面からサポート致します。

略歴
1971年 福岡県生まれ
1995年 慶応義塾大学商学部卒業 明治安田生命保険相互会社勤務
    (銀座支社・契約管理部・沖縄支社~1999年)
1999年 エッカ石油株式会社勤務
2005年 堀下社会保険労務士事務所
2021年 社会保険労務士法人 堀下&パートナーズ設立

主な書籍
「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版社)
社労士・弁護士の労働トラブル解決物語(労働新聞社)
他 14冊

社会保険労務士 堀下 和紀

主な活動

セミナー講師/テレビ出演/書籍、記事執筆

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