給与計算
2025.03.05
給与計算の基本とは
目次
1. 給与計算とは
2. 給与計算の重要性と背景
3. 給与計算の流れ
4. 給与計算に必要なデータ
5. 給与の内容
・5.1 基本給
・5.2 労働時間と水準
・5.3 手当
・5.4 変動手当
6. 引かれる金額(控除)
・6.1 社会保険
・6.2 税金(所得税・住民税)
・6.3 その他の控除
7. 給与明細書の見方
8. 注意すべきポイント
9. 給与計算の実務例と具体的な手順
10. 給与計算と法令
11. 給与計算の効率化とシステム化
12. 給与計算に関わるよくある質問
13. まとめ
1. 給与計算とは
給与計算とは、企業が従業員に対して毎月あるいは定期的に支払う給与額を正しく算定するために行う一連の業務です。具体的には、「基本給」「「手当」などの加算要素と、「社会保険料」「所得税」「住民税」などの控除要素を踏まえて、最終的な支給額(手取り)を計算します。給与計算は、単に計算して支払うだけでなく、法律や社会保険の仕組みに沿って行わなければならず、非常に重要な業務です。
給与は、従業員の生活を支える根幹であり、企業と従業員の信頼関係に直結します。万が一計算ミスや支払遅延が起こると、従業員のモチベーションの低下やトラブルにつながります。また、社会保険料や税金を正しく計算・納付しないと法的リスクが発生する可能性があり、企業にとっても大きな問題となります。そのため、給与計算を正しく、かつミスなく行うことは企業経営においても極めて重要です。
2. 給与計算の重要性と背景
給与計算は昔からある業務ですが、時代とともに労働形態や給与体系も変化してきました。以下のような背景が、給与計算の重要性をさらに高めています。
- 働き方改革や多様な雇用形態
- フルタイム、パートタイム、アルバイト、派遣社員など、多様な働き方が広がっています。それぞれの形態によって給与計算ルールも異なるため、正確性が求められます。
- 社会保険や税制の改正
- 日本では定期的に社会保険料率や税率が見直されます。そのたびに給与計算に反映させる必要があり、最新情報に追随していないと誤った支給や控除が行われる可能性があります。
- 法律上の義務
- 労働基準法や所得税法など、給与計算に関わる法律は多岐にわたります。これらの法律を遵守しながら給与を支給することは企業の義務であり、違反すると罰則のリスクが生じます。
- 従業員の安心感とモチベーション
- 給与計算が正確に行われることは、従業員が安心して働く上で不可欠です。給与に関するトラブルが続くと従業員が企業に不信感を抱き、離職率の上昇につながる可能性があります。
こうした背景から、給与計算業務は単なる事務作業ではなく、法務や労務管理の知識も必要とされる総合的な業務と位置づけられています。
3. 給与計算の流れ
給与計算の大まかな流れは、以下のステップに分けることができます。企業規模や業種によって多少の違いはあるものの、一般的には共通する部分が多いです。
- 勤怠データの収集
- 従業員の出勤日数、勤務時間、残業時間、欠勤・遅刻・早退などの情報を集計します。勤怠管理システムを利用する企業も増えており、正確な労働時間の把握が第一歩です。
- 基本給の計算
- 正社員の場合、毎月固定の基本給が設定されていることが多いです。パートやアルバイトの場合、時給×労働時間などで算定します。
- 各種手当の加算
- 通勤手当、住宅手当、家族手当、資格手当など、あらかじめ規定された条件を満たす従業員に対して、手当を加算します。また、残業手当や深夜勤務手当などは、法律で定められた割増率で計算されます。
- 控除額の計算
- 社会保険料、所得税、住民税、その他の社内規定による控除(積立金や組合費など)を差し引きます。社会保険料は標準報酬月額に基づいて計算され、所得税は源泉徴収税額表をもとに控除額を算定します。
- 差引支給額(手取り給与)の確定
- 支給額(基本給+手当)から控除額を引いたものが、最終的な支給額となります。
- 給与明細の作成と配布
- 給与計算の結果を個々の従業員に通知するために、給与明細書を作成します。現在では、紙で配布するだけでなく、Web上で明細を確認できるシステムを導入している企業も増えています。
- 給与支払い
- 銀行振込や現金支給など、企業によって支払い形態は様々です。多くの企業が銀行振込を採用しています。
4. 給与計算に必要なデータ
正確な給与計算を行うには、以下の情報を正しく把握・管理する必要があります。
- 従業員の基本情報
- 氏名、住所、雇用形態(正社員、契約社員、パート・アルバイトなど)、役職、入社日など。雇用形態によって支給額の算定方法や社会保険の加入状況が変わるため、重要なデータです。
- 勤怠情報
- 出勤日数、労働時間、残業時間、休日出勤の有無など。タイムカードや勤怠管理システムから取得します。
- 賃金規定
- 基本給の計算方法、各種手当の支給要件や支給額、割増賃金の算出基準などが定められている就業規則や給与規程を参照します。
- 社会保険情報
- 健康保険、厚生年金、雇用保険などの加入状況、標準報酬月額、保険料率など。年齢や給与水準によって保険料が異なるため、常に最新の情報を確認しましょう。
- 税金情報
- 従業員の扶養家族の数や扶養控除額など、所得税の源泉徴収を行うための情報が必要です。また、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、市町村から送付される住民税決定通知書の内容を確認します。
- その他の情報
- 昇給や昇格のタイミング、賞与の支給タイミング、会社独自の制度(例えば社員持株会や積立制度など)があれば、それらに関する情報も給与計算に反映させる必要があります。
5. 給与の内容
給与は、大きく分けて「支給項目」と「控除項目」の2つに区分されます。ここでは、まず支給項目について詳しく見ていきます。
5.1 基本給
基本給は、従業員が通常の勤務を行った場合に支給される賃金の基本部分です。一般的には、職種・役職・勤続年数・能力などによって設定されることが多いです。企業によっては、年俸制を導入している場合もあり、その場合は年俸を12分割、あるいは16分割(ボーナスを含む)して月々の支給額を決定します。
5.2 労働時間と水準
給与を計算する上で、労働時間の管理は最も基本的かつ重要なポイントです。正社員であれば、1日8時間、週40時間を基準とするフルタイム勤務が一般的ですが、パートやアルバイトでは時給制で計算されるため、シフトごとの勤怠を正確に把握する必要があります。残業が発生する場合は、法定労働時間を超えた部分に対して割増賃金を支払うことが法律で義務付けられています。
5.3 手当
基本給に上乗せして支払われるのが各種手当です。手当には次のような種類があります。
- 通勤手当: 通勤にかかる費用を補助するための手当です。公共交通機関を利用する場合は、定期代など実費に相当する額が支給されることが一般的です。
- 住宅手当: 従業員の居住費を補助するための手当です。家賃の一定割合を支給する企業もあれば、エリアや扶養の有無などによって金額を変えるケースもあります。
- 家族手当: 扶養家族がいる従業員に対して支給される手当です。子どもの人数や配偶者の有無で金額が変動する場合もあります。
- 資格手当: 業務に関連する資格を取得している場合に、能力や専門性を評価する目的で支給される手当です。
- 役職手当: 管理職やリーダー職など、特定の役職に就いている従業員に対して支給される手当です。
- 夜勤手当: 夜間に働く従業員に対して割増賃金以外に追加で支払われる手当です。交代制を採用している工場や医療機関などでよく見られます。
5.4 変動手当
変動手当とは、従業員の勤務状況に応じて変動する手当の総称です。次のような種類があります。
- 残業手当: 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合に支払う割増賃金です。通常、割増率は125%です。
- 深夜勤務手当: 夜22時から翌5時までの間に働く場合に支払われる割増賃金です。通常、割増率は、25%です。
- 休日勤務手当: 会社で定めた休日に勤務した場合に支払われる割増賃金です。通常、割増率は135%です。
変動手当の計算を正確に行うには、勤怠管理の精度が欠かせません。タイムカードやシステムを用いて、正確に労働時間を把握することが大切です。
6. 引かれる金額(控除)
給与にはさまざまな控除項目があります。控除とは、支給額から差し引くお金のことで、法律や制度、企業の規定に基づき算定されます。主な控除には次のようなものがあります。
6.1 社会保険
日本では、会社員やパートタイマーでも一定の条件を満たす場合は社会保険に加入する必要があります。社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険(労災保険料は企業負担)などを指し、以下のように区分されます。
- 健康保険料: 医療費の補助や傷病手当金などの給付を受けるために支払う保険料です。保険料は従業員と企業が折半で負担します。
- 厚生年金保険料: 将来の年金給付を支えるために支払う保険料です。これも従業員と企業が半額ずつ負担します。
- 雇用保険料: 失業した場合の失業給付などに充当される保険料です。一般の事業では従業員負担率と企業負担率が法律で定められています。
- 介護保険料(40歳以上): 40歳以上になると介護保険料の負担が追加されます。こちらも健康保険料とあわせて納付します。
社会保険料は標準報酬月額に基づいて算定されるため、給与額が変動した場合は保険料も見直されることがあります。年に1度の定時決定や随時改定によって月額が変更される点も注意が必要です。
6.2 税金(所得税・住民税)
給与計算で最も大きな控除項目のひとつが、所得税と住民税です。
- 所得税: 毎月の給与を支給する際に源泉徴収されるのが一般的です。従業員の扶養家族数や給与額に応じて、国税庁が公表する「源泉徴収税額表」から税額を求めます。年末には年末調整を行い、1年間の所得税を再計算して過不足を精算します。
- 住民税: 前年の所得に基づいて決定され、翌年6月から翌々年5月までの12か月間、毎月給与から特別徴収(天引き)されるのが通常です。住民税額は市区町村によって微妙に異なる場合があります。
6.3 その他の控除
企業によっては独自の制度を設けており、以下のようなものも控除対象となることがあります。
- 社内積立制度: 社員旅行やレクリエーション費用のために積立を行うケースもあります。
- 組合費: 労働組合に加入している従業員に対して、組合費が給与から控除される場合があります。
- 財形貯蓄: 貯蓄を奨励する目的で企業が制度として導入している場合、希望者は毎月一定額を給与から天引きして積立を行うことができます。
7. 給与明細書の見方
給与明細書には、支給項目と控除項目、そして最終的な手取り額が記載されています。主な記載事項としては、以下のようなものがあります。
- 基本給: 毎月定められた金額
- 手当: 通勤手当、住宅手当、家族手当、残業手当など
- 社会保険料: 健康保険、厚生年金保険、雇用保険など
- 税金: 所得税、住民税
- 差引支給額: 総支給額から各種控除を引いた手取り金額
給与明細は、法律上も発行義務があり、従業員が自分の給与の内訳を確認する大切な資料です。2006年の税法改正で、 2007年1月1日以降給与明細や源泉徴収票の電子交付が認められるようになりました。 現在は、退職所得の支払明細・源泉徴収票、公的年金の源泉徴収票なども電子交付が可能です。最近では、紙の明細だけでなく、WEB上の明細管理システムを活用する企業も増えています。
8. 注意すべきポイント
給与計算において、以下の点に特に注意する必要があります。
- 勤怠データの正確性
- 残業時間や休日出勤の有無を正しく管理しないと、割増賃金の計算でミスが発生しやすくなります。
- 社会保険料の改定対応
- 社会保険料率は年度ごとに見直されることがあります。改定時期(一般的に年度切り替え)に合わせてシステムや計算方法をアップデートしましょう。
- 税制改正への対応
- 税率や控除額が変更された場合は、その内容を正しく反映する必要があります。源泉徴収税額表も定期的に見直されるため、最新の表を確認してください。
- 住民税の特別徴収
- 市町村から特別徴収税額通知書が送付され、対象者ごとに月々の住民税額が決定します。6月から翌年5月までの住民税を正しく反映することが必要です。
- 給与明細の発行義務
- 労働基準法では、企業が従業員に対して賃金計算の内訳を示す「賃金台帳」への記載や、その写し(給与明細)を渡すことが義務付けられています。WEB明細であってもアクセスできない状況にしないよう配慮が必要です。
- 就業規則や給与規程との整合性
- 企業独自の制度がある場合、就業規則や給与規程と実際の計算処理が矛盾しないようにしましょう。
- 個人情報の保護
- 給与計算に関するデータは個人情報に該当します。データの管理や共有にあたっては、情報漏えいが発生しないよう十分に注意が必要です。
9. 給与計算の実務例と具体的な手順
ここでは、簡単なモデルケースを挙げて、給与計算の実務上の流れをもう少し詳細に紹介します。
実務例の前提
- 正社員Aさん
- 基本給: 200,000円
- 住宅手当: 20,000円
- 通勤手当: 10,000円
- 時間外労働: 月10時間(法定内残業1.25倍で計算)
- 社会保険料: 健康保険・厚生年金・雇用保険が対象
- 扶養家族: 配偶者1人(所得税の源泉徴収額に影響)
- 住民税: 月額10,000円(前年の所得に基づく特別徴収額)
Step 1: 勤怠データの確認
Aさんの残業時間が10時間と報告されている場合、残業手当の算定根拠になる時間を正確に把握します。もし法定外残業であれば割増率1.25倍、深夜帯であればさらに別の割増率が適用されます。
Step 2: 支給額の算定
- 基本給: 200,000円
- 住宅手当: 20,000円
- 通勤手当: 10,000円
- 残業手当: 残業単価 × 残業時間
- 残業単価の求め方は「(基本給+諸手当) ÷ 所定労働時間 × 割増率」となります。
- 仮にAさんの所定労働時間を月160時間とすると、1時間当たりの基本賃金は(200,000+20,000)/160 = 1,375円です。残業割増率1.25倍であれば1,375×1.25 = 1,718.75円が残業1時間の賃金となります。月10時間残業なら17,187.5円(一般的には小数点以下を四捨五入します)。
- 以上から残業手当は約17,188円としましょう。
よって、Aさんの総支給額は以下のようになります。
総支給額 = 基本給 + 住宅手当 + 通勤手当 + 残業手当
= 200,000 + 20,000 + 10,000 + 17,188
= 247,188円
Step 3: 控除額の計算
- 社会保険料: 標準報酬月額に基づいて計算するため、厳密には毎月の給与によって変動があるとは限りません(定時決定や随時改定)。ここでは簡易計算として、仮に健康保険料が10,000円、厚生年金保険料が18,000円、雇用保険料が1,000円とします。
- 所得税: 源泉徴収税額表を参照して計算します。扶養家族が1名の場合、月額表(給与所得者)で該当する欄から税額を確認します。仮にAさんのケースで所得税が4,000円としましょう。
- 住民税: 月額10,000円(特別徴収)
これらを合計すると、以下のように控除額を求められます。
社会保険料合計 = 10,000 (健康) + 18,000 (年金) + 1,000 (雇用)
= 29,000円
所得税 = 4,000円
住民税 = 10,000円
控除合計 = 29,000 + 4,000 + 10,000 = 43,000円
Step 4: 差引支給額(手取り)の確定
差引支給額 = 総支給額 - 控除額合計
= 247,188 - 43,000
= 204,188円
最終的にAさんが受け取る手取り額は約204,188円となります。
Step 5: 給与明細の作成と支給
- 支給項目:基本給、手当(住宅、通勤、残業)
- 控除項目:社会保険料、所得税、住民税
- 手取り額:204,188円
給与明細を作成し、Aさんに配布します。同時に給与を指定の金融機関へ振り込み、支払いを完了します。
10. 給与計算と法令
給与計算には、労働基準法、所得税法、地方税法、健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法など、多くの法律が関係します。主な留意点は以下の通りです。
- 最低賃金法の遵守
- 都道府県ごとに最低賃金が定められています。時給換算した際に最低賃金を下回らないよう注意が必要です。
- 割増賃金の支払い
- 残業や休日出勤、深夜労働などには、労働基準法で定められた割増率で賃金を支払う必要があります。
- 年次有給休暇の管理
- 有給休暇を正しく付与し、取得状況を管理することも重要です。給与計算上、有給休暇の取得は労働時間の扱いに影響します。
- 源泉徴収義務
- 企業は所得税を源泉徴収して国に納付する義務があります。源泉徴収を怠ると罰金や追徴課税などのペナルティが課されることがあります。
- 住民税の特別徴収
- 住民税は原則として特別徴収が義務付けられており、従業員の給与から天引きして市町村に納付しなければなりません。
- 社会保険の加入要件
- 一定の労働時間・勤務日数を満たす従業員は社会保険の被保険者となるため、適切に手続きを行う必要があります。
11. 給与計算の効率化とシステム化
給与計算は煩雑かつ専門知識が必要な業務です。近年では、給与計算ソフトやクラウドサービスの普及により、多くの企業が給与計算をシステム化しています。主なメリットとしては、
- 計算ミスの軽減
- 手作業で行うと、どうしてもヒューマンエラーが発生しやすくなりますが、ソフトウェアを利用することで計算精度が上がります。
- 最新の法改正への追随
- 給与計算ソフトは定期的にアップデートされ、社会保険料率や税率が改定された際にも自動で対応してくれます。
- 時間とコストの削減
- 計算や書類作成に費やす時間が短縮され、人件費や外部委託費の削減につながります。
- データ管理の効率化
- 従業員の勤怠データや過去の給与履歴を一元管理できるため、確認や修正が容易になります。
システム導入にあたっては、企業の規模や従業員数、導入コストなどを踏まえて選択することが大切です。クラウド型の給与計算システムであれば、インターネット環境があればどこからでも操作可能で、バックアップも自動化されるため、災害時のリスクにも強いという利点があります。
12. 給与計算に関わるよくある質問
Q1: アルバイトやパートも社会保険に入る必要がありますか?
A1: 一定の条件(週所定労働時間や契約期間など)を満たす場合は、パートやアルバイトでも社会保険に加入する義務があります。具体的な条件は法令や実際の就労状況によって異なるため、必ず最新情報を確認しましょう。
Q2: 残業代を払わなくてもよい職種はありますか?
A2: 管理監督者などの一部の職種を除き、原則として残業代を支払う義務があります。ただし「管理監督者」の定義は法律上厳格であり、単に管理職という肩書だけでは認められません。注意が必要です。
Q3: 住民税はどのタイミングで変更されますか?
A3: 原則として毎年6月に前年の所得に基づいて住民税が再計算されます。会社には「特別徴収税額決定通知書」が送付され、それに従って6月から翌年5月までの住民税が天引きされる仕組みです。
Q4: 年末調整とは何ですか?
A4: 毎月源泉徴収されている所得税は、あくまで概算です。そこで年末(12月など)に1年間の所得と控除額を最終的に確定させ、過不足分を精算する手続きが年末調整です。複数箇所で働いている場合などは、自分で確定申告を行う必要があるケースもあります。
Q5: 給与が支給されないケースはありますか?
A5: 法律上、正当な理由なく給与を支払わないことは違法です。会社の資金繰りが厳しいなどの事情があっても、従業員に給与を支払う義務があります。支払いが行われない場合は、労働基準監督署などへの相談が考えられます。
13. まとめ
給与計算は、企業と従業員の信頼関係を支えるきわめて重要な業務です。労働基準法や社会保険制度、税制など、関連する法律や制度が多く、常に最新情報を把握して正しく計算しなければなりません。計算ミスや支払いの遅れは、従業員の生活に直結する問題となり、企業全体の信頼を損ねるリスクをはらんでいます。
一方で、近年はクラウド型の給与計算システムや勤怠管理システムが普及し、給与計算の効率化や精度向上を図る企業が増えてきました。自社の規模や就業形態、法律改正への対応状況などを踏まえ、最適な方法で給与計算を行うことが大切です。
総じて、給与計算は単なる事務作業ではなく、労務管理や法務の知識も必要とされる専門性の高い業務と言えます。従業員の安心と企業の安定運営を支えるためにも、正確で公正な給与計算を心がけましょう。
この記事の監修
社会保険労務士法人堀下&パートナーズ
社会保険労務士 堀下 和紀
お客様に寄り添い、法律知識だけでなく相手の立場を理解し、本当に求められる最適な解決策をご提供することを信念としています。
また、特定社会保険労務士として労働トラブルの解決に尽力し、経営者の経験を活かして実務と理論の両面からサポート致します。
略歴
1971年 福岡県生まれ
1995年 慶応義塾大学商学部卒業 明治安田生命保険相互会社勤務
(銀座支社・契約管理部・沖縄支社~1999年)
1999年 エッカ石油株式会社勤務
2005年 堀下社会保険労務士事務所
2021年 社会保険労務士法人 堀下&パートナーズ設立
主な書籍
・「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版社)
・ 社労士・弁護士の労働トラブル解決物語(労働新聞社)
他 14冊

社会保険労務士 堀下 和紀
主な活動
セミナー講師/テレビ出演/書籍、記事執筆