労務管理
2020.12.04
タイムカードの時間=労働時間ではない?
- タイムカードで記録された会社にいる時間は、すべて「労働時間」になりますか?
「労働時間」とは、「所定労働時間」+「所定外労働時間(残業)」です。
「会社に来た時刻」から「仕事を始めた時刻」までの時間を「滞留時間」といいます。「仕事が終わった時刻」から「会社から帰った時刻」までの時間も「滞留時間」です。
一般的にタイムカードは、「会社に来た時刻」と「会社から帰った時刻」を記録しています。
つまり、実際に仕事をした「労働時間」以外に、会社にいるが仕事はしていない「滞留時間」が含まれている場合が多いです。
- 「滞留時間」にも給与の支払いが必要ですか?
いいえ。
法律上、賃金支払い義務が生じるのは「労働時間」です。「滞留時間」に賃金支払い義務はありません。
ただし、「労働時間」と「滞留時間」を区別する義務は会社にあります。
タイムカードだけの勤怠管理では、このふたつを区別することは困難です。残業申請制度やカード式・生体認証式の勤怠デジタル管理等により、「労働時間」と「滞留時間」を厳格に区別管理する必要があります。
会社は、社員の労働時間を管理する義務を有しています。
「滞留時間」に対して賃金を支払わない場合には、その証拠を会社が示す必要があります。証拠が示せない場合には、滞留時間も労働時間とみなされ、賃金・残業代を支払うリスクが発生します。
また、近年、労働者側から残業時間の証拠として裁判所へ提出されたものには下記のようなものもあります。
残業時間の証拠 | 裁判例 |
パソコンのログ記録 | PE&HR事件 東京地判平18.11.10 |
磁気カードによるプリペイドカード式の乗車カードの通勤記録、最寄り駅の駐車場の入庫記録 | 大庄ほか事件 京都地判平22.5.25 |
「帰るコール」の着信履歴やメールの送受信記録、さらには従業員が記録したメモ等 | NTT西日本ほか事件 大阪地判平22.4.23、 オオシマネットほか事件 和歌山地田辺支部判平21.7.17 |
厳格な労働時間管理は、リスク防止対策に直結します。
残業代未払い等のトラブルが発生する前の段階で、タイムカードや勤怠システムの運用方法、労働時間の把握方法をしっかりと整備しておくことが重要です。
労働時間・滞留時間については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。