労働法務
2020.12.07
「同種職種で働いたことがある」と身上調書を偽ったら、内定取消しできるか?
- ある内定者の「同種職種で働いたことがある」という内定者の職歴を重視し内定を出しました。しかし、それが虚偽だと判明しました。「身上調書の書類に虚偽の事実を記載し、あるいは、真実を秘匿した」という就業規則の内定取消事由を根拠に内定を取り消ししようと思いますが、いかがでしょうか?
できます。
内定取消し(解約権の行使)のが有効とされるためには、「①採用内定通知書や誓約書に記載された『取消事由』に該当する事情が発生したこと」を前提とし、「②その事情が、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものであること」が必要といわれます。
日立製作所事件(横浜地判昭49・6・19)においては、「その結果労働力の資質、能力を客観的合理的にみて誤認し、企業の秩序維持に支障をきたすおそれがあるものとされたとき、又は企業の運営にあたり円滑な人間関係、相互信頼関係を維持できる性格を欠いていて企業内に留めておくことができないほどの不信義性が認められる場合に、解約権を行使することができる。」とされており、また、上記の不信義性は「詐称した事項、態度、程度、方法、動機、詐称していたことが判明するに至った経緯等を総合的に判断して、その程度を定めるべき」とされています。
「会社が、労働者の偽った項目を相当程度重要視して採用内定を出していた」という点です。このような場合においては、まさに「労働力の資質、能力を客観的合理的にみて誤認」したといえるでしょうから、内定取消しも有効とされる可能性が相当程度あるものと言えます。
上記の通り判例は、「単に身上経歴を偽っただけでは、内定取り消しも有効にならない」というように、内定を取り消すことについて相当程度に厳しい立場を取っているといえます。採用手続きを厳格に行い、安易に採用内定を出すことを真に慎むべきということは言えるのですが、その他に会社側で行うことができる防衛策としては、「身上経歴等の項目で、重視するポイント(このポイントだけは偽られたくはない、という部分)を明確化しておくこと」が挙げられると思います。
内定取消しについては、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。