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労働法務

2021.01.07

制服の着替え時間は労働時間なのか?

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労働時間
事務職員が制服を着用することになっていますが、その着替え時間は労働時間なのでしょうか?

いいえ。制服の着替え時間は、労働時間ではありません。

残業代の支払いが必要となる「労働時間」について、三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平1239)は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と客観的に定義して、「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」と判断しています。

この裁判例では、作業服等の着脱行為を含む業務の準備行為について、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当する」と判断しています。多くの裁判例が、①義務付け(強制)の程度、②業務性の有無(業務との関連性)、③時間的・場所的拘束性の有無を総合考慮して、「労働時間」に該当するか否かを判断しています。

以上を前提として、制服の着脱時間が「労働時間」に該当するか検討すると、事務職員の制服の着脱行為は、原則として労務提供の準備行為に過ぎず、「労働時間」に該当しません。

これに対して、作業服等の着脱時間が「労働時間」に当たるかが争われた前掲裁判例(三菱重工業長崎造船所事件-最一小判平1239)では、①作業服及び保護具等の装着が義務づけられ、②更衣所等で行うものとされていることから、作業服等の装着時間が「労働時間」に当たるとしましたが、この裁判例では、就業規則等により、作業服のほか保護具等の装着を更衣所等において行うことを義務づけられており、これを怠ると懲戒処分を受けたり就業を拒否されたり、また成績考課に反映されて賃金の減収につながる場合があったとの事実が認定されています。事務職員の制服とは前提が異なります。着替えが「労働時間」に当たらないとした裁判例として、日野自動車工業事件(最一小判昭591018)もあります。

ただし、就業規則等で更衣場所を指定し、更衣場所以外で制服を着脱すると懲戒処分等を課していた等の事情があれば、制服の着替え時間も「労働時間」になり得るのでご留意ください。

制服の着替え時間は労働時間なのかについては、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。

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