労働法務
2021.01.14
会社から現場に向かう自動車の乗り合いは労働時間か?
- 会社から現場に向かう自動車の乗り合いは労働時間か? 質問 当社は、会社に集合させた社員に、工具を積み込ませ、自動車に乗り合いさせて現場に向かっています。現場からの労働時間開始としています。問題ありますか?
はい。車両の乗合による会社事務所から工事現場までの移動時間は労働時間である可能性が高いです。
残業代の支払いが必要となる「労働時間」について、三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平12・3・9)は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と客観的に定義して、「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」と判断しています。そして、この「使用者の指揮命令」は明示の指示のみならず黙示の指示も含まれています。
総設事件(東京地判平20・2・22)は、「①会社事務所に集合して車両に資材や作業道具を積み込んでいたこと、②その後当日の作業内容について打合せが行われたこと、③各社員をどの現場に差し向けるかも会社事務所で采配されていたことなどを理由に、会社は、早朝に会社事務所に来ることを指導していた」ことから、この時点で「社員は会社の指揮命令下にあった」と評価され、その後の「車両による移動時間も自由時間ではなく『労働時間』である」と評価されました。
自動車の乗合について、会社事務所と工事現場の往復は通勤としての性格を有するものであり「労働時間」ではないとした裁判例(阿由葉工務店事件-東京地判平14・11・15)は、「①社員の所定就業時間(現場での作業の開始時刻から終了時刻まで)は、午前8時から午後6時までとされており、実際もそのように運用されていたこと、②当該社員が、出勤の際、会社事務所に立ち寄り、車両により単独又は複数で工事現場に向かっていたこと、③この車両による移動は、会社が命じたものではなく、車両運転者、集合時刻等も移動者の間で任意に定めていたこと、④当日の作業内容は前日までに決まっていたことが多かったこと」を、その根拠としています。
自動車の乗合が「労働時間」と評価されないためには、以下の3点に留意しましょう。
1 現場での作業時間を所定労働時間内に収める。
2 現場集合を基本とし、現場までの経路は車両の乗合のほか、自家用車、バイク、電車を電車を自由に認める。
3 当日の作業内容や材料等の積込は前日までに済ませ、当日は車両の乗合だけとする(積込作業などさせない)。
会社から現場に向かう自動車の乗り合いは労働時間かについては、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。