労働法務
2021.07.02
年俸制とは?
- 年俸制を採用しています。例えば年俸480万の場合、16分割し、30万の月給と夏季・冬季に60万を上乗せして支払っています。毎年社員と契約書を交わし、契約書に年俸には残業代、休日手当、深夜手当を含むと記載しています。時間管理はせず、残業等は支給していません。これでいいですよね?
労基法41条2号に規定される管理監督者、労基法38条の3、38条の4に規定される裁量労働制の要件を満たさない限り、会社は、1日8時間、週40時間を超える労働に対する残業代を支払わなくてはなりません。(システムワークス事件 大阪地判平14.10.25)管理監督者または裁量労働制の要件を満たす場合であっても午後10時から午前5時までの深夜手当の支払義務があります。裁量労働制の場合は、休日労働に対する割増賃金の支払い義務があります。
年俸制は、「賃金の全部または相当部分を労働者の業績等に関する目標の達成度を評価して年単位の設定する制度」(菅野「労働法」)です。年俸制であっても労基法の毎月1回以上支払い原則がありますので、年間ベースで決定した賃金を12分して毎月支払ったり、16分して毎月の賃金と4カ月分の賃金を夏と冬の賞与として支払ったりします。しかし、労基法に年俸制を採用しているという理由で残業代や深夜手当を免除してよいという規定はありません。
労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有しています。管理監督者・みなし労働時間制についても、健康確保を図る必要から適正な労働時間管理を行う責務があります。(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」)
年俸制を採用する場合は、労基法41条2号に規定される管理監督者、労基法38条の3に規定される専門業務型裁量労働制、労基法38条の3に規定される企画業務型裁量労働制、それ以外の社員に分類をしてください。
管理監督者であれば、残業代は残業代の規定は適用除外となります。しかし、この場合であっても深夜手当は支払いが必要になります。深夜手当部分について固定深夜手当の検討が必要です。
専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制であれば、1日あたりの労働時間を労働者の裁量に委ねることができます。労基法の定めに従って制度設計を行ない、固定残業手当の検討が必要です。休日労働に対する割増賃金も必要ですので、固定休日残業手当の検討も必要です。深夜手当部分については固定深夜手当の検討が必要です。
それ以外の社員については、固定残業手当、固定休日残業手当、固定深夜手当の検討が必要です。
労働条件通知書または労働契約書が重要になります。詳細は、弁護士や社会保険労務士にご相談ください。
年俸制については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。