労働法務
2021.07.16
事業場外みなし労働とは?
- 営業部門に在籍する社員に対しては、就業規則に事業場外みなし労働時間制適用すると規定し、営業手当を支給していますので、残業代は支払っていません。いいですよね?
残業代は支払う必要があります。大東建託時間外割増賃金請求事件(福井地裁平13.9.10)では、「テナント営業社員等の始業・終業時間は、タイムカードによって管理把握され、かつ、事業場外で労働時間中も、携帯電話を通じた事業場の連絡・指示により常時管理されていたのであるから、その事業場外労働は被告の指揮監督下にあったものと認めるのが相当であり、事業場外労働時間の算定が困難であったということはできない」とし、「事業場外労働に関する協定」にかかわらず、事業場外労働時間の算定はタイムカードにより把握された実労働時間によるべきである」として、みなし労働時間の適用を否定しました。割増賃金の請求を認めた他、本件においては、未払割増賃金と同額の付加金の支払も命じています。
阪急トラベルサポート残業代等請求事件(最高裁第二小法廷平成26.1.24)では、旅行会社の主催する募集型企画旅行の添乗業務について、事業場外労働のみなし労働時間制が適用できるかが争われ、みなし労働時間制の適用を否定されています。最高裁の判断の要旨として、「添乗業務は、旅行日程がその日時や目的地等を明らかにして定められることによって、業務の内容があらかじめ具体的に確定されており、添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定にかかる選択の幅は限られている」とし、「派遣先である旅行会社は、派遣添乗員との間で、あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で、予定された旅行日程に途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ、旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされている」ということから、「業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、旅行会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等に鑑みると、添乗業務については、これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難い」としています。
労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとした裁判例は数多く、以下のすべての裁判例でみなし労働時間制の適用を否定されています。
みなし労働時間制の適用を否定した裁判例
事件名
業務
適用
ほるぷ賃金等請求事件
(東京地裁平9.8.1)
プロモーター社員の展覧会場での展示販売業務
否定
千里山生活協同組合賃金等請求事件
(大阪地裁平11.5.31)
共同購入運営部門での配達業務
否定
サンマーク残業手当等請求事件
(大阪地裁平14.3.29)
情報誌の広告営業社員の事業場外における営業活動
否定
光和商事解雇無効確認等請求事件
(大阪地裁平14.7.19)
貸金等の営業社員の外勤
否定
みなし労働時間制(労基法38条の2第1項)を適用するためには、同法がいう「労働時間を算定し難いとき」に該当しなければなりません。
近年は、携帯電話やスマートフォンによるメール等により労働者が海外を含むどこにいても会社と連絡、指示を受けることが可能です。みなし労働時間制を活用している場合は、早急に就業規則を改定し、固定残業手当等の別の制度に変更することがブラック企業と言わせない方法です。
添乗員のみなし労働時間制を否定した阪急トラベルサポート残業代等請求事件(最高裁第二小法廷平成26.1.24)の判決に象徴されるように、事業場外のみなし労働時間制の適用は極めて困難と考えるべきです。
事業場外みなし労働については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。