労働法務
2021.08.06
突然の年次有給休暇の申請は断れるか?
- 「明日、年次有給休暇とります」と社員が請求してきました。しかし、就業規則では、年次有給休暇は、1週間前までに申請すると定められています。断れますか?
はい。断れます。
年次有給休暇(以下「年休」といいます)の申請時期を取得日の1週間前とすることは認められます。
年休は、使用者が、その雇入れの日から起算して六ヵ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して一定数の有給休暇を与えなければならない制度です(労基法39条1項)。
このように、会社は、社員が請求(指定)した時季に年休を付与しなければなりません。ただし、社員が請求(指定)した時季に「事業の正常な運営を妨げる場合」においては、その時季の年休取得を拒否して、他の時季に年休を取得させることができます(労基法39条5項)。なお、社員が年休の時季を指定する権利を「時季指定権」、会社が社員の指定した時季の年休の付与を拒否する権利を「時季変更権」といいます。
本件のように、社員から突然前日に時季指定がなされると、代替要員の確保の都合がつかなくなるなど、業務上の支障が生じることがあります。
そこで、時季指定の時期について、たとえば1週間前とする制限を設ける必要があります。判例も、年休の時季を指定すべき時期につき原則的な制限を定めたものとして合理性を有し、労働基準法39条に違反するものではなく有効であるとしています(此花電報電話局事件-最一小判昭57・3・18)。もっとも、時季指定の時間的制限を前に設定し過ぎると(例えば1カ月前など)、従業員としては年休を取得しにくくなり、規定の合理性が認められにくくなります。
年次有給休暇については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。