労働法務
2024.05.07
配転命令
・配転命令は原則自由。ただし、明示・黙示の限定特約の存在、権利の濫用で無効
配転命令の原則
「配転」とは、従業員の配置の変更です。「配転」のうち、同一勤務地(事業所)内の勤務箇所(所属部署)の変更が「配置転換」であり、勤務地の変更が「転勤」です。
配転命令の例外(配転命令が無効になる場合)
配転命令は無制限に認められるわけではありません。
労働契約に勤務地限定特約がある場合には、その労働者の勤務場所を変更するには労働者の同意を要します。勤務地限定特約は、黙示の合意であっても有効です。
ブック・ローン事件(神戸地決昭54.7.12)では、新聞募集広告で勤務場所が和歌山市内となっていたことから黙示の勤務地限定特約が認められました。
新日本通信事件(大阪地判昭9.3.24)では、採用面接での転勤できないとの応募者の希望を社内稟議書に記載していたことから勤務地限定特約が認められました。
次に、配転命令が権利濫用にあたる場合には、配転命令は認められません。前掲東亜ペイント事件最高裁判決で、どのような場合に配転命令が権利濫用にあたるかの判断基準を示しています。
配転命令が権利濫用となる判断基準
同判決では、①業務上の必要性は、「余人をもって容易に替え難い」といった高度の必要性は不要とされています。多くの裁判例で争点になっているのは、③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益の有無です。
配転命令の際に会社がおこなうべきこと
業務上必要な配転を決定してから配転命令までのプロセス(①配転命令の候補者を選定、②候補者と個別面談、③再度選考、④配転命令書の交付)を適正に行うことにより人事権の濫用となることを防ぐことが可能となります。
1 勤務地限定特約・職種限定特約を確認する
「勤務地限定の特約」があれば、業務の必要性があったとしても配転は無効となります。主婦がパートタイマーの配転は、「黙示の勤務地限定特約」が存在したとされる可能性があります。ただし、労働契約書等に「配転の可能性あり」と「明示」した場合には、「黙示の勤務地限定特約」は存在しないとされます。
職種変更も同様です。職種変更は専門性の高いシステムエンジニア、医師、看護師、歯科衛生士、アナウンサー、自動車運転手、技術者などは、「黙示の業種限定特約」が存在したと認定される場合があるので、これらの職種変更についても細心の注意が必要です。
2 業務上の必要性の存在の確認する
「余人をもって容易に替え難い」といった高度の必要性は不要ですが、業務上の必要性が存在することを確認することは必要です。
3 労働者の不利益を最大限考慮し人選する
労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであれば、権利の濫用となり配転は無効となります。 配転に伴う労働者の不利益として主張される不利益の具体例を5つ挙げます。
労働者に配慮し、「業務の必要性>労働者の不利益」となるかどうかを検討します。育児介護休業法26条では、子の養育や家族の介護を行う労働者の転勤については、配慮しなければならない旨の規定があります。個別の労働者の状況に応じて、様々な配慮の検討が必要となります。
配転命令については、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズへお問い合わせください。
「内部通報」については、こちらをご覧ください。