労働法務
2022.07.25
健康診断を拒否されてしまった。強制することはできるのか?
- 当社は、社長の私(男性)と女性社員4名の会社ですが、その女性社員が「私の体重や胸囲を社長に知られたくない。」と言って、年に一度の定期健康診断を受診しません。やむを得ず、1か月以内に健康診断を受診しないと懲戒処分(減給処分または譴責処分)を下すと警告すると、女性社員たちから、「社長は私たちの胸囲を知りたいだけだ。性的嫌がらせに当たり、セクハラだ」などと猛反発されています。健康診断を強制することはできないのでしょうか?
健康診断は、業務命令で、社員に対して強制することができます。
会社は、社員に対して、当然に健康診断を強制することができます。男性社員、女性社員は関係ありません。安衛法66条5項に「労働者は、健康診断を受けなければならない」と規定されているからです。これに違反した場合には、会社は、50万円以下の罰金が課されます。
このように、会社は、社員に対して、健康診断を受けさせる義務を課されていますので、当然ながら社員に対して、健康診断を受診する旨の業務命令を下すことができますし、これに違反した場合は懲戒処分も可能です。
労働者に健康診断を受診する義務があるかが争点となった裁判例(愛知県教委(減給処分)事件-最一小判平13・4・26)も、「市町村立中学校の教諭その他の職員は、・・・労働安全衛生法66条5項、結核予防法7条1項の規定に従うべきであり、職務上の上司である当該中学校の校長は、当該中学校に所属する教諭その他の職員に対し、職務上の命令として、結核の有無に関するエックス線検査を受診することを命ずることができる」として、減給処分が有効とされています。
どうすればいいのか?
健康診断の受診が会社の法的義務であることを知らない社員が多く存在します。健康診断は会社の福利厚生の措置であると誤解しているケースが散見されます。この場合、「健康診断受診の指示」と題した社内の文書による通達で告知を行うことが効果あります。
それでも応じない場合には、文書で健康診断受診命令書を交付してください。
裁判例(システムコンサルタント事件-最二小決平12・10・13)では、労災による会社の安全配慮義務違反が問われた事件ですが、社員が、会社から健康診断結果の通知を受け、会社から精密検査を受けるように指示されていたにもかかわらず、まったく受診せず、医師の治療を受けることもしなかったことを理由に、過失相殺として損害賠償額が50%減額されました。
普段から、文書により健康診断の受診を促していれば、万一の事態に発展しても、会社の損害を最小限に抑えることができます。
健康診断を拒否されてしまって困った場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「採用時の健康チェック方法」については、こちらをご覧ください。