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労働法務

2021.02.02

持ち帰り残業は、労働時間か?

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法務 / 労働時間 / 残業 / 在宅ワーク
就業時間内に仕事が終わるはずですが、従業員が勝手に自宅に帰ってからの作業している時間を残業時間として申請してきました。残業代を支払わなくてはなりませんか?

持ち帰り残業は、原則として労働時間ではありません。したがって、残業代の支給は、必要ありません。

残業代の支払いが必要となる「労働時間」について、三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平1239)は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と客観的に定義して、「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」と判断しています。そして、この「使用者の指揮命令」は明示の指示のみならず黙示の指示も含まれています。

したがって、使用者による場所的時間的拘束から外れた自宅における持ち帰り残業は、「使用者の指揮命令下に置かれている」とは言いがたく、原則として「労働時間」とは言えません。医療法人社団明芳会(R病院)事件(東京地判平26326)も、労災の事案ですが、資料の作成を所定労働時間内に行うことを会社が許容していたこと、資料の作成がその性質や作業量から自宅に持ち帰らなければ処理できないものとは認められないことを理由に、持ち帰り残業の労働時間性を否定しています。

 本件の相談内容と異なり、相当の作業量を伴う業務を相当短期間のうちに遂行しなければならず、社員が自宅に持ち帰って作業せざるを得ない状況にあり、そのことを会社が認識していた場合は、会社による黙示の指示があったと認定されて、「労働時間」と評価される可能性があります。

 国・甲府労基署長(潤工社)事件(甲府地判平23726)も、労災の事案ですが、ISO認証取得準備のために自宅で行った作業は、従業員がそれをせざるを得ない状況にあったのだから、明示の指示の有無にかかわらず業務性が認められ、時間外労働として計算すべきと判断しています。

 昨今、労災事案では、上記裁判例のみならず、持ち帰り残業を業務の加重性を判断する考慮要素して労災を認定する裁判例が増えてきています(フィット産業事件-大阪地判平22915、東京地判平22118など)。

 持ち帰り残業の管理は難しいですが、会社としては、社員にとって作業量が過大なものでないか、自宅で作業をしていないかを確認したり、自宅で作業をせずに会社のパソコンで作業をするよう指示したりといった管理が必要となります。

持ち帰り残業については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。

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