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労働法務

2021.02.18

タイムカードを利用していないので、労働時間の証拠がない!は通るのか?

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労働時間 / タイムカード / 残業時間
当社は、タイムカードを使用していません。出勤した日に印鑑を押す出勤簿です。ある社員が「メモがあるので、残業代を3年分支払ってください」と言ってきました。支払わなくてはいけませんか?

はい。支払わなくてはなりません。タイムカードがなくても労働時間となります。当該社員は、メモを主張していますが、これらの「乗車カードの通勤記録」「パソコンのログ記録」などの証拠を持っている可能性も十分に考えられます。過去3年分の残業代の支払が必要となります。

 そもそも、残業代を支払わないために労働時間の管理を放棄すること自体が論外です。あらゆる情報が残業時間の証拠となる昨今、労働時間の管理を放棄しても抜本的解決を図れることはありませんので、後で述べる正攻法に舵を切るようにすべきです。

残業代の支払いが必要となる「労働時間」について、三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平1239)は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と客観的に定義して、「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」と判断しています。

スタジオツインク事件(大阪高判平17121)は、使用者の労働時間管理義務を前提として、「時間外手当等請求訴訟においては、本来、労働時間を管理すべき使用者側が適切に積極否認ないし間接反証を行うことが期待されているという側面もあるのであって、合理的な理由がないにもかかわらず、使用者が、本来、容易に提出できるはずの労働時間管理に関する資料を提出しない場合には、公平の観点に照らし、合理的な推計方法により労働時間を算定することが許される場合もある」と判示して、労働者の推計方法を大幅に採用しました。

 残業時間の証拠となりうるものとして、パソコンのログ記録(PE&HR事件-東京地判平181110)、磁気カードによるプリペイドカード式の乗車カードの通勤記録、最寄り駅の駐車場の入庫記録(大庄ほか事件-京都地判平22525)、「帰るコール」の着信履歴やメールの送受信記録、さらには従業員が記録したメモ等(NTT西日本ほか事件-大阪地判平22423、オオシマネットほか事件-和歌山地田辺支部判平21717)などが挙げられます。

厚生労働省は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付け基発第339号)を発表しました。労働時間の管理すらできていない会社は、まずは、かかる通達を遵守することから始めるべきです。

1始業・終業時刻の確認及び記録労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録する事。
2始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
3自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置ア 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
ウ 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。
時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
4労働時間の記録に関する書類の保存労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。
5労働時間を管理する者の職務当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。
6労働時間等設定改善委員会等の活用必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。

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