労働法務
2021.06.21
労働基準法41条2号の管理監督者とは?
- 店長に、店長手当として3万円を支給し、店舗運営は一切任せています。店長の出退勤はシフトで決まっており、実質的な月間労働時間は約250時間です。管理監督者に該当するでしょうか?
労基法41条2項の管理監督者の要件を満たしていません。したがって、残業代を支払う必要があります。
過去の裁判例(日本マクドナルド割増賃金請求事件-東京地決平20・12・8)では、「管理監督者は、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、上記の基本原則に反するような事態が避けられ、当該労働者の保護に欠けるところがない」場合にのみ労基法41条2項の管理監督者の要件を満たしているとされました。
同事件では、管理監督者とみなされない場合は、「使用者は、労働者に対し、原則として、1週40時間又は1日8時間を超えて労働させてはならず(労基法32条)、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を与えなければならないし(同法34条1項)、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない(同法35条1項)」と労基法の原理原則を改めて示し、「労働基準法が規定するこれらの労働条件は、最低基準を定めたものであるから(同法1条2項)、この規制の枠を超えて労働させる場合に同法所定の割増賃金を支払うべき」と未払い残業代の遡及支払を命じました。
同事件では、管理監督者の要件を「管理監督者に当たるといえるためには、店長の名称だけでなく、実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められるものでなければならず、具体的には、①職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか、②その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか否か、③給与(基本給、役付手当等)及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされているか否かなどの諸点から判断すべきであるといえる」と判示しました。
労基法41条2号が規定する「管理監督者」の要件を整理すると以下のとおりです。
要素
1.
労務管理について経営者と一体的な立場にある重要な権限と職務を有すること
2.
労働時間について裁量権を有していること
3.
その地位にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること
本件が管理監督者に該当しないと考えられる理由は、以下のとおりです。
要素
検討結果
1.
労務管理について経営者と一体的な立場にある重要な権限と職務を有すること
店舗については、権限を有しているものの、企業全体に関する権限を有しておらず、経営者と一体的な立場にある重要な権限と職務を有するとはいえない
2.
労働時間について裁量権を有していること
シフトで管理されており、裁量権を有しているとはいえない
3.
その地位にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること
3万円の店長手当では、その地位にふさわしい賃金上の処遇を与えられているとはいえない
今後について労基法41条2項の管理監督者の規定が適用されない前提で労働条件の変更を提案することをおすすめします。具体的には、時間短縮の措置を検討するか、固定残業手当制度による賃金体系の見直しなどが考えられます。
新しい労働条件による労働契約書を取り交わすことが労使間の将来のトラブル防止に寄与すると思われます。
「名ばかり管理職」の問題を長期化させると、膨大な残業代、付加金、遅延損害金の支払いを命じられるリスクがあります。あいまいな点を残すことなく解決することを推奨します。金額的に高額になりますので、社会保険労務士、弁護士等の専門家を活用されることを強くおすすめします。
管理監督者については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。