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労働法務

2021.07.29

固定残業制度の適正な運用とは?

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残業 / 固定残業制度 / 固定残業手当
固定残業制度を採用し、「基本給22万4800円、職務手当(割増賃金)15万4400円」と労働条件通知書に記載しています。タイムカード打刻させていますが、残業代は固定残業手当に含まれるはずですので、計算していません。いいですよね?

時間管理をして、超過した時間分は残業代を支払う必要があります。ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高判平24.10.19)では、基本給22万4800円、職務手当(割増賃金)15万4400円と記載されていたものの、職務手当が何時間の時間外労働の対価であるかは記載されず、残業の時間計算もなされていなかったため、「時間外労働が何時間発生したとしても定額時間外賃金以外には時間外賃金を支払わないという趣旨で定額時間外賃金を受給する『無制限な定額時間外賃金に関する合意』がなされていたと認定されています。そのうえで、「本件職務手当は、労基法36条の上限として周知されている月45時間分の通常残業の対価に過ぎず、月45時間を超えてされた通常残業及び深夜残業に対しては、別途、時間外賃金が支払われなければならない」とされ、95時間分の残業代は支払われているという会社の主張が退けられました。 

固定残業制度を採用しているといえど、時間管理を実質的に行なっていない場合、制度の整備がなされていない場合等は、固定残業制度そのものが否定されます。

固定残業制度を導入し運用する場合には、最高裁判所第一小法廷平成24年3月8日判決に付された櫻井龍子裁判官の補足意見で示された3つの要件を満たすことが必要です。 

毎月の給与の中にあらかじめ一定時間(例えば10時間分)の残業手当が算入されている旨が雇用契約上明確にされている 

支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されている 

①の一定時間を超えて残業が行われた場合には当然その所定の支給日に別途上乗せして残業手当を支給する旨もあらかじめ明らかにしている 

①労働条件通知書で、固定残業手当には何時間分の残業代が含まれているかを明確にし、②基本給と固定残業手当を明確に分けて記載し、③固定残業に含まれる残業時間を超えて残業があった場合は、超えた額を支給する旨を記載することが必要です。毎月残業時間を計算し、固定残業に含まれる残業時間を超えた場合には支払いをすることは当然です。 

また、ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高判平24.10.19)では、職務手当の受給合意について、労基法36条の上限として周知されている月45時間を超えて具体的な時間外労働義務を発生させるものと解釈すべきでないと判示しました。 

すなわち、本件職務手当が95時間分の時間外賃金であると解釈すると、本件職務手当の受給を合意したXは95時間の時間外労働義務を負うことになるものと解されますが、このような長時間の時間外労働を義務付けることは、使用者の業務運営に配慮しながらも労働者の生活と仕事を調和させようとする労基法36条の規定を無意味なものとするばかりでなく、安全配慮義務に違反し、公序良俗に反するおそれさえあるとされたのです。 

固定残業手当を規定する場合には、45時間以内に抑えることが必要と考えられます。 

固定残業制度については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。

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