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労働法務

2021.08.13

長期、連続の年次有給休暇の申請は断れるか?

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年次有給休暇
社員が、繁忙期直前に何の予告もなく突然、連続24日間の年休を申請してきました。時季変更権を行使できますよね

長期かつ連続した年次有給休暇(以下「年休」といいます)年休の時期指定に対しては、時季変更権の行使が認められる可能性が高いです。

年休は、使用者が、その雇入れの日から起算して六ヵ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して一定数の有給休暇を与えなければならない制度です(労基法39条1項)。

このように、会社は、社員が請求(指定)した時季に年休を付与しなければなりません。ただし、社員が請求(指定)した時季に「事業の正常な運営を妨げる場合」においては、その時季の年休取得を拒否して、他の時季に年休を取得させることができます(労基法39条5項)。なお、社員が年休の時季を指定する権利を「時季指定権」、会社が社員の指定した時季の年休の付与を拒否する権利を「時季変更権」といいます。

そして、時季変更権の行使のための有効要件である「事業の正常な運営を妨げる場合」の意義について、最高裁判所は明確な基準を示していませんが、下級審では、「一般的には、当該労働者(年休請求者)の所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、当該労働者の担当する仕事の内容、性質、繁閑、代替勤務者の配置の難易、時季を同じくして年休を請求した者の人数等諸般の事情を考慮して客観的、合理的に判断されるべきものである」と解釈されています(名古屋鉄道郵便局事件、名古屋高判平1・5・30)。

それでは、今回のご相談のような事前の予告なく長期かつ連続の年休申請に対して、時季変更権の行使は認められるでしょうか。

社員が長期かつ連続の年休を申請する場合、それが長期であればあるほど、会社において代替勤務者を確保することが困難となり、事業の正常な運営に支障を来すことになります。しかも、会社としては、その長期休暇期間中における業務量の程度、代替勤務者確保の可能性の有無、同じ時期に休暇を指定する他の従業員の人数等を正確に予測することは困難です。

そこで、このような長期かつ連続の有給申請については、社員も、会社の業務計画、他の従業員の休暇予定等との事前の調整を図る必要があります。過去の裁判例では、社員側にこのような事前の調整が不十分であったとして、会社の時期変更権の行使を適法としたものがあります(時事通信社事件、最判平4.6.23)。

そうすると、本件のような繁忙期直前の長期かつ連続の有給申請に対しても時季変更権の行使が認められる可能性が高いといえます。

ただし、時季変更権の行使が認められる可能性が高いといっても、実際に時季変更権が認められるか否かは、事業の規模、内容、当該労働者の担当する仕事の内容、性質、繁閑、代替勤務者の配置の難易、時季を同じくして年休を請求した者の人数等諸般の事情により決まります。

長期かつ連続の有給申請でも、これらの諸事情を慎重に検討したうえで時季変更権の行使を決めてください。

年次有給休暇については、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。

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