労働法務
2022.12.05
給与を差し押さえされた社員にけん責処分をくだしていいか?
- 社員が給与を差し押さえられました。会社に事務手続きの迷惑を掛け、会社の名誉も毀損していると考えますので、けん責処分しようと思っています。いいですよね?
けん責処分は、無効とされる可能性が高いです。
社員の給与差押は、私生活上の問題となります。私生活上の非行は、会社は原則として懲戒処分を行うことはできません。例外的に企業秩序維持に重大な影響を与えている場合や会社の社会的信用を大きく下げたりした場合にのみ懲戒処分を行うことができます。社員が給与を差し押さえられたからといって懲戒処分を行うことはできません。
裁判例では、私生活上の非行が懲戒処分として有効に判断される要件として、「行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から綜合的に判断し・・・行為により会社の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価される場合」(日本鋼管事件-最判昭49・3・15)を挙げています。
給与を差し押さえられたことは会社の社会的評価には何ら影響を与えていません。事務手続きの増加については、裁判所が命令する法的な手続きですので、企業はこれに従う義務があります。
どうすればいいのか?
給与差し押さえは、法律に基づいて行われる強制執行です。裁判所から差し押さえ命令を受け取った場合は、強制執行の対象となる給与の有無を確認して、裁判所に報告を行わなければなりません。手取り額の4分の1が強制執行の対象となります。裁判所の指示に従ってください。
懲戒処分を行うことはできませんが、私生活に支障を来しており、会社に迷惑を掛けていることに違いはありません。注意・指導を行うことは必要なことと考えられます。
社員が給与を差し押さえされた場合の対応は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
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