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労働法務

2023.05.01

優遇措置の提案のない執拗な退職勧奨は違法か?

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能力不足 / 退職勧奨
能力不足の社員に対して退職勧奨を行っています。その社員は当初から一貫して退職勧奨に応じないことを表明していますが、当社は何度も繰り返し退職するように説得していました。「優遇措置の提案もないのに何度も退職勧奨しないでください」と言われました。こんな退職勧奨はいけないのでしょうか?

優遇措置の提案のない執拗な退職勧奨は、違法とされる可能性が高いです。

退職勧奨とは、勧奨対象となった労働者の自発的な退職意思の形成を働きかけるための説得活動です。「単なる事実行為である」と断定する裁判例(下関商業高校事件・控訴審-広島高判昭52・1・24)もありますが、このような「事実行為」としての側面のほか、合意解約の申入れあるいは誘因という「法律行為」の性格も併せ持つと考えるべきでしょう(下関商業高校事件・第一審-山口地下関支判昭49・9・28)。 

 いずれにせよ、退職について労働者に決定権がありますので、使用者が一方的に労働契約を解約する「解雇」とは全く異なります。また、「解雇」の場合、「客観的に合理的な理由」が要求され(そのため解雇リスクが存在する)、原則として「解雇予告手当」等も要求されますが、「退職勧奨」の場合、このような「客観的に合理的な理由」「解雇予告手当」等は要求されません。 

ところで、このような退職勧奨も無制限に行うことは許されません。すなわち、退職勧奨が、社会的相当性を逸脱した態様で、労働者に不当な心理的圧力を加えたり、又は名誉感情を不当に害するような表現を用いたりした場合には違法となります。具体的には、退職勧奨の際に、脅迫、虚偽の説明、威圧的な言動、人格を否定するような発言をした場合、退職勧奨が違法とされます。さらに、従業員が勧奨に応じない意思を固め、勧奨の面談には応じられないことを会社に確実に伝えた後の退職勧奨は、社会通念上通念上相当な範囲を逸脱したものとして違法です。 

過去の裁判例(下関商業高校事件-最一小判昭55・7・10)でも、退職勧奨が社会的相当性を逸脱した態様として違法であるとして4~5万円の損害賠償請求が認容されています。同裁判例は、社員が第一回の勧奨以来一貫して勧奨に応じないことを表明し、かつすでに優遇措置も打切られていたのにかかわらず、退職勧奨担当者らが、十数回にわたり、1回あたり20分から2時間15分に及ぶ退職勧奨を繰り返した事案であり、本件退職勧奨が「あまりにも執拗になされた感はまぬがれず、退職勧奨として許容される限界を越えている」と評価されています。 

したがって、本件の退職勧奨も違法であり、社員から慰謝料の請求を受けることになります。 

退職勧奨を検討したい場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。

「有期契約の雇い止めを有効にするポイントは?」については、こちらをご覧ください。

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