労働法務
2023.06.29
退職時の未消化の年次有給休暇を拒否することができるか?
- 退職する社員が未消化の年次有給休暇をまとめて取得したいと言ってきました。会社としては、業務の引継ぎができないので、有給休暇の取得は認めないと拒否しました。良いでしょうか?
退職時の未消化の年次有給休暇は拒否することできません。
労基法では、労働者が請求する時季に年次有給休暇を与えることとしています(時季指定権)。これに対して会社は、「拒否権」はありません。これに対抗できる手段としては「時季変更権(労働者から指定された時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、その時季を変更することができる)」のみです。
それでは、本件において、業務の引継ぎをしないことが、この「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するとして、会社が時季変更権を行使して、退職日を変更するなどして、業務引継ぎまで年次有給休暇の取得を保留するなどの措置はできないのでしょうか。
行政通達では「年休の権利が労基法に基づくものである限り、その労働者の解雇予定日を超えての時季変更権行使は行えない」(昭和49年1月11日 基収5554)としています。これは自己都合退職の場合も同様であると解されています。今回の本件のように退職時に、退職日まで年休を使いたいとの請求があれば、「時季変更権」の行使はできないのです。
どうすればいいのか?
具体的な対策としては、次のようなものがあげられます。
①退職日の調整(先延ばし)を相談
当該社員に対して、引継ぎをしないことが業務に支障があることを説得し、退職日の先延ばしを承諾してもらう。
②年次有給休暇の買上げ
年次有給休暇を買上げすることを条件に引継ぎに必要な日数を勤務してもらう(本人との同意が必要)。年次有給休暇の買上げは原則として認められていませんが、以下の年次有給休暇について、買上げが認められています。
・法定付与日数を超える年休を与えている場合の超える部分
・退職、解雇により消滅する年休の残日数
・時効(2年間)で消滅した部分
退職時にまとめて年次有給休暇を請求される会社は、普段から年有給休暇が取りにくいという特徴があります。計画的年次有給休暇の付与を行うなどして、社員の年次有給休暇の取得促進を図ることが労務管理上、重要であると考えます。
年次有給休暇について悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「パートに以前退職金を支払った。今回も支払うべきか?」については、こちらをご覧ください。