労働法務
2023.07.10
一度提出した退職届は、撤回できるか?
- 辞表を人事部長に提出した社員が、数日経過後、「先日提出した退職の申し出を白紙に戻してほしい」と言ってきました。これを拒否しました。良いですよね?
一度提出した退職届は、撤回できません。
退職の意思表示については、2つの解釈があります。1つは一方的な雇用契約解約の意思表示である「辞職」で、もう1つは、雇用契約の合意解約の申し入れである「依願退職の申出」です。
通常は社員が退職する際には、書面で「退職届」や「退職願」、「辞表」が提出されますが、この書面が「辞職」にあたるか「依願退職の申出」にあたるかは、必ずしも一義的に明らかにはなりません。
仮に、「辞職」であれば、撤回不可能です。他方、「依願退職の申出」であれば、承諾まで撤回可能です。承諾があったと評価されるかは、受領の経緯です。特に、決裁権限者が直接受領した場合には,その時点で承諾があったとみなされます。決裁権限者は会社の規模により違います。
一般的には、労働者が退職届を提出する場合、直接、社長や総務部長、人事部長等に手渡すことになります。社長や総務部長、人事部長には退職の承認権限がありますので、承認権限者が退職届を受け取った段階で、承諾の意思表示があったとみなされます。
大隈鐵工所事件(最三小判昭62・9・18)では、「人事部長に退職届に対する承認の決定権限があるならば、人事部長が労働者の退職届を受理したことで、労働契約の解約申込みに対する会社の即時の承認の意思が示されたというべきである。そして、これによって、労働契約の解約の合意が成立したとみなされる」と判示しています。
よって、本件が、承認権限者に退職届が提出されているのであれば、当該労働者の退職の撤回は認められません。
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「退職を予定している社員に賞与は必要か?」については、こちらをご覧ください。