労働法務
2023.09.04
社員が顧客名簿を流用した場合、競業避止義務違反で、損害賠償請求できるか?
- 退社した社員が、当社の顧客名簿を退社時に持ち出し、それを用いて電話をかけるなどの、営業活動を行っている場合、競業避止義務違反で、損害賠償請求できるでしょうか?
社員が顧客名簿を流用した場合、競業避止義務違反で、損害賠償請求できる可能性は高いです。
退職後に競業に就職し、単に営業活動を行っているだけでは「自由競争の範囲内」として、不法行為責任が認められる可能性に乏しいものと思われます。
しかし、本件のように「会社の顧客名簿を利用した」場合については、判例も「違法な営業活動である」と認定する傾向が強いです(東京地判平19・1・26、カナッツコミュニティ事件-東京地判平23・6・15など)。本来的には会社の顧客名簿は内部的な資料であり、また同業他社に就職していた場合に当然に身につけられる知識でもない(その会社固有の財産である)、という点が重視されているといえます。
従って、本件のような事情を前提とする限りにおいては、不法行為に基づく損害賠償請求は認められる可能性が相当程度あり得るものと考えられます。
どうすればいいのか?
競業避止に関して、会社側から法的措置が認められる場合は比較的限定的であり、最も強力な(しかし要望の多い)差止に至っては必ずしも容易には認められません。会社側としてはこの現状は理解しなければなりません。
しかしながら、上記の現状を踏まえたうえで、会社側として出来ることは、やはり「就業規則あるいは個別労働契約において、有効性が肯定される競業避止特約を締結しておく」ことです。専門家のアドバイスも参考にしつつ、できる限り有効性が否定されないように、緻密な制度設計を行うことが必要といえます。
競業避止義務違反で悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「社員が引き抜き行為を行った場合、競業避止義務違反で、損害賠償請求できるか?」については、こちらをご覧ください。