労働法務
2023.11.06
パートの賃金を正社員と同等にしなければならないのか?
- パートタイマー社員が「正社員と比較して賃金が低い。正社員と同等の待遇にせよ。」と主張しています。パートの賃金を正社員と同等にしなければならないのでしょうか?
パートの賃金を正社員と同等にする必要はありません。
正社員と非正規社員(契約社員、パートタイマー、嘱託社員など)との賃金等の処遇格差の違いをめぐりトラブルになることがあります。
丸子警報器事件(長野地裁上田支判平8・3・15)は、臨時社員(2ヵ月更新の雇用契約で、長い者で通算25年を超えていた)らが正社員との賃金格差を不当として争われた事案です。裁判例は、「同一労働同一賃金の原則は、一般的な法規範とは認められない」としつつも、「勤続年数が同じ正社員と臨時社員の業務内容や勤務日数および勤務時間等が同一であると認められるとき」、「賃金格差が許容される範囲を超えた場合は公序良俗違反となる」と判示し、正社員と臨時社員の賃金格差について、正社員の賃金の8割までの格差を不法行為に基づく損害額と認定しました。
一方、日本郵便逓送事件(大阪地判平14・5・22)では、臨時運転士が正社員と労働内容が同じであるにもかかわらず、賃金規程が別に定められ、諸手当の不支給等の賃金格差が存在することは同一労働同一賃金の原則に反しているとして、争われた事案です。裁判例は、「会社と臨時運転士が有期雇用契約の締結時に賃金を含めた労働条件等に正社員と差があることは予定されていたこと」なので、「雇用契約が労働基準法違反でない限り」、「正社員との賃金格差が不合理で違法ではない」と判示されました。
この2つの判例を検討すると、正社員と非正規社員との賃金格差については、一般的に会社における就業実態や労働契約の内容やその他雇用管理面を勘案して著しい賃金格差が生じてなければ不法行為ではないと整理されます。
よって、本件が許容できないほどの著しい賃金格差があることが立証できなければ、違法行為ではないと判断される可能性が高いです。
どうすればいいのか?
パートタイム労働法9条では、通常の労働者と同視される(a.正社員と職務内容が同一、b.期間の定めのない労働契約(有期契約の反復継続によって期間の定めがないと同視できるものも含む)を締結している、c.雇用関係の全期間において職務内容・配置が正社員と同一の範囲で変更されると見込まれる)パートタイム労働者に対し、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いを禁止しています。
会社は、正社員や契約社員、パートタイマー、嘱託社員等の雇用形態ごとに労働条件(雇用期間、業務内容、職責役割、時間外労働や休日労働の有無、転勤の有無等)の差異を明確にし、その内容に応じた賃金制度を構築することを推奨します。
パートの賃金で悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
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