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労働法務

2021.10.21

業績悪化による25%の一律賃金カットは有効か?

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賃金 / 賃金カット
会社が業績不振で、従業員一律25%の賃金カットをしようと思っています。よいでしょうか?

全体的な賃金減額、いわゆるベースダウンを労働者の同意なく行うことは、就業規則の変更により可能です。ただし、その際には就業規則の不利益変更の一般論による規制を受けることになります。 

  すなわち、⑴労働者への周知⑵変更の合理性の二つの要件を満たすことが求められます(第四銀行事件-最二小判平9・2・28)。 

  ⑵変更の合理性の判断は、以下の諸要素を総合して判断します。 

 

  ① 労働者が被る不利益の程度 

  ② 変更の必要性の内容・程度 

  ③ 変更後の就業規則の内容自体の相当性 

  ④ 同種事項に関するわが国社会における一般的状況 

  ⑤ 労働組合等との交渉の経緯 

  ⑥ 他の労働組合との交渉の経緯 

  ⑦ 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況 

 

  賃金減額の合理性も、上記の①~⑦の事情を総合して判断されます。ただ、「25%の一律減額措置が合理性なし」と判断された事例(杉本石油ガス事件-東京地決平14・7・31)や「2年間限定の10%程度の基準賃金の減額が合理性あり」と判断された事例(住友重機械工業事件-東京地判平19・2・14)、また「賃金減額の20%以上の部分のみについて合理性を否定」した事例(大阪地判平22・2・3)などの裁判例からすれば、少なくとも20%以上の一律賃金減額についてはその合理性を肯定するためには、相当重大な理由が必要でしょう。 

 

どうすればいいのか?

 そもそも、人件費をカットする場合、就業規則の不利益変更による一方的なカットを行う前に、「従業員から個別同意を取る」という手段を試みるべきです。

理解を得られた一部の従業員から個別的な同意を取り、同意を得られなかった従業員に対してのみ一方的な賃金カットを行う、とすることで、賃金カットの有効性を肯定されやすくすると共に、それが無効とされたときのリスクを減少することができます。 

 賃金減額を検討する際には、上記の7要素を頭に入れつつ、慎重に手順を考えることが肝要です。例えば、人件費の削減のみならず、その他の経費節減の努力を行うことや、社員や組合等への説明・交渉を誠実に行うこと等は、必須です。減額幅は(最大でも)20%以内に留めておくのが無難です。

 

一律賃金カットについては、沖縄の社会保険労務士法人 堀下&パートナーズにご相談ください。

「年次有給休休暇を取得した社員の賞与の査定を下げてもいいか?」については、こちらをご覧ください。

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