労働法務
2022.02.01
うつ病で休業中の副業を禁止することはできるか?
- うつ病により休職中の社員が他社で副業していることが判明しました。禁止することでリスクがありますか?
禁止できます。
私傷病休職制度は、会社による解雇猶予措置であり、労働契約を維持しながら、労働者に治療の機会を与えるものです。治療の機会を与えるために労務提供義務を免除している以上、社員は休職中療養に専念する義務があります(療養専念義務)。
たとえ、ノーワークノーペイの原則により休職中の賃金がなくても、休職中に他社で副業することは労務提供義務に違反します。
このような副業が判明した場合、会社はその社員に対し、副業を辞めて療養に専念するように業務命令を下すことができます。このような業務命令に違反して副業を辞めない場合は、懲戒処分を下すことも可能です。
どうすればいいのか?
このような副業が判明した場合、療養専念義務違反、副業禁止規定違反、業務命令違反などが就業規則中で懲戒事由と定められていれば、懲戒処分の対象となります。休職中に副業(オートバイ店開店)した社員に対する懲戒解雇処分の有効性が争われた裁判例(ジャムコ立川工場事件–東京地八王子支判平17・3・16)では、「原告が、被告から給与を一部支給されたまま本件オートバイ店開店・営業していた行為は、会社の職場秩序に影響し、かつ被告従業員の地位と両立することのできない程度・態様のものであると認めるのが相当である」としたうえで、「原告が被告から休職給を受けながら自営業を営むことは、他の従業員から見れば奇異であり、職場秩序を乱すものであって、本件懲戒解雇事由である本件オートバイ店の営業行為の服務規律違反の程度は、原告被告間の雇用契約における信頼関係を損なう程度のものと認めるのが相当である」として懲戒解雇処分が有効とされました。
懲戒処分を検討するに当たっては、主治医と面談して、当該社員の病状は本当に治癒していないのか、副業が病状に与える影響の有無及び程度等について意見を聞く必要があります。さらに、主治医のほか、産業医や会社指定の医師の意見を聞いてもよいです。
なお、副業禁止規定違反については、いかなる副業でも懲戒処分の対象となるわけではなく、懲戒処分の可否及びその程度は、副業によって生じる職場秩序への影響や労務提供への支障の程度によって決まりますので、これらの要素も慎重に吟味しながら、懲戒処分の可否及び内容を決定してください。
メンタルヘルスについては、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにご相談ください。
「新型うつ病を理由に休みたがる社員を休職させなければいけないか?」については、こちらをご覧ください。