労働法務
2022.07.11
横領が発覚!解雇の相当性はあるのか?
- ある社員が時々タクシーメーターを倒さずにお客さんを乗せて走り、代金約1,000円をたびたび、着服していることが発覚しました。弁明の機会を付与したところ、当該社員自身が事実を認めたため、当社はその社員を懲戒解雇処分にしました。ところが、その者から「横領の総額が少なかったのに懲戒解雇まで行うのは不当である」と言われてしまいました。懲戒解雇は間違ってなかったですよね?
懲戒解雇は有効とされる可能性が高いです。
本件では、懲戒処分を行うについての「①事実の確認」「②法的評価(懲戒事由該当性の検討)」「③処分の重さの検討」のうち、「③処分の重さの検討」が問題となっているものです。
そして、横領行為については、横領行為それ自体の背信性の大きさ、および企業秩序上それを予防する必要性が高いことから、裁判において横領行為を理由とする懲戒解雇は、横領行為の回数の多寡、領得金額の多寡を問わずに有効とされるが高いと言えます。
例えば、東日本交通事件(東京地決昭31・7・2)でも、1回の横領行為による懲戒解雇が有効と判断され(その社員が反省の色を示さなかったことも理由とされています)、またメトロ交通事件(東京地決昭33・9・25)でも、「合計260円(現在価値で約4000円程度)」の横領行為による懲戒解雇が有効と判断されています。これらの判例に照らせば、本件のような事例においても、懲戒解雇が有効とされる可能性は相当程度高いものと思われます。
なお、どのような場合においても、「①事実の確認」にも注意すべきです。当該社員が横領の事実を認めたとしても、それだけで軽々に懲戒解雇を行うのではなく、「他にも横領の事実があるのではないか」「横領の事実を裏付ける客観的証拠はあるか」という点について、十分に吟味した上で、懲戒解雇に臨む方がより安全であるということが出来るでしょう。また、「言った、言っていない」の議論を防ぐためにも「自認書」など横領を認める書面に署名捺印させることも重要です。
横領で、解雇の有効性に悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「横領の強い疑いのある社員が、調査協力を拒否。懲戒解雇できるのか?」については、こちらをご覧ください。