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労働法務

2022.12.19

職場内で不倫した社員を懲戒解雇できるのか?

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懲戒解雇 / 不倫
妻子ある部長と配偶者がいる女性社員が不倫しています。事実が顧客に知られ、信用失墜しています。また社内の雰囲気も最悪です。2人を社内風紀秩序維持義務違反で、懲戒解雇できますよね?

不倫で懲戒解雇は、無効とされる可能性が高いです。

 職場内の不倫は、私生活上の非行に対する懲戒の問題として取り扱う必要があります。不倫は配偶者に対する不法行為(民法709条)ですが、不法行為を行なっているだけで処分を行うことはできません。 

 ①職場内の風紀・秩序を満たしているか、②企業運営に具体的な影響を及ぼしているか、③会社の名誉・信用を傷つけているかの観点で懲戒処分を検討します。 

 本件の場合には、顧客に不倫の事実を知られ信用が傷つき、企業運営に具体的な影響を与えています。社内にも悪い噂で風致秩序維持に悪影響を及ぼしています。よって、不倫をやめるように勧告することは問題ありません。また、不倫を辞めない場合には懲戒処分を行うことも問題ありません。ただし、即時に懲戒解雇することは、行き過ぎです。 

国鉄中国支社事件(最一小判昭49228)では、「営利を目的とする会社がその名誉信用その他相当の社会的評価を維持することは会社の存立ないし事業の運営にとって不可欠であるから会社の社会的評価に重大な影響を与えるような従業員の行為についてはそれが職務遂行と直接関係のない私生活上で行われたものであっても、これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められなければならない」と判示しています。 

ただし、その要件として行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類、態様、規模、会社の経済界に占める地位、経済方針及びその従業員の会社における地位、職種等諸般の事情から総合的に判断して、・・・会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならないとしています。 

また、不倫についての過去の裁判例(繁機工設備事件-旭川地判平元1227は、「女子従業員と相手の男子従業員の地位、職務内容、交際の態様、会社の規模、業態等に照らしても、会社の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えた場合を懲戒解雇の要件としています。なお、社内不倫の場合、「社内の風紀・秩序を乱し」ただけではなく、それが「企業運営に具体的な影響を与えた」ことが要件になっていることに注意すべきです。 

 妻子あるバス観光バス運転手が未成年のバスガイドと情交関係を持ち妊娠させた裁判例(長野電鉄仮処分事件-東京高判昭41・7・30)では、懲戒解雇が有効と判断されています。事案により懲戒処分を検討していくことが必要になります。  

 

どうすればいいのか?

 私生活上の問題と言えど、不法行為であることには間違いありませんので、口頭による注意・指導、不倫行為や誤解を招く行動をやめるように警告することが良いでしょう。なお、不倫は、後日セクハラの主張をされる等のリスクがあり、加害者と会社が連帯して責任を負う必要があることも説明し、警告しましょう。 

 総合的に判断し不倫が社内への影響が軽微な場合は、処分なしか軽微な処分にとどめるべきでしょう。ただし、影響度合いが大きい場合には、案件によってけん責、減給、出勤停止等の懲戒処分を検討しましょう。 

 

社内不倫で処分内容に悩んだ場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。

「給与を差し押さえされた社員にけん責処分をくだしていいか?」については、こちらをご覧ください。

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