労働法務
2023.05.19
結婚を理由とする退職勧奨は違法か?
- 当社の女性社員が結婚すると報告されたので、婚姻後も仕事を続けるのか確認したところ、その女性社員は、仕事を続けることに支障はないと述べました。しかしながら、当社はさらに、「せっかくの縁を大切にしなさい」「人の思いやりが理解できないのか」などと叱責しながら退職を勧めたところ、その女性社員から「脅迫されているみたいです」と言われました。結婚を理由とする退職勧奨は違法でしょうか?
結婚を理由とする退職勧奨は、違法とされる可能性が高いです。
男女雇用機会均等法9条は、「女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない」(1項)、「女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない」(2項)と定めていますが、婚姻を理由とする退職勧奨については厚生労働省の指針も含めて何も語られていません。
しかしながら、均等法9条2項の趣旨から、婚姻を理由とする退職勧奨は、特段の事情がない限り違法と評価されるでしょう。過去の裁判例(東光パッケージ(退職勧奨)事件-大阪地判平18・7・27)では、退職勧奨の隠れた理由であったとしても、他に経営合理化の必要性があったことから、退職勧奨が直ちに不法行為になるとはいえないと判断されたものもありますが、例外と解すべきでしょう。
本件と類似の裁判例(ダイヤモンド・ピー・アール・センター事件-東京地判平17・10・21)でも、「女性は婚姻後、家庭に入るべきという考えによるものであり、それだけで退職を勧奨する理由になるものではないし、また、その手段・方法も、一貫して就労の継続を表明している原告(筆者注:社員)に対し、その意思を直接間接に繰り返し確認し、他の社員の面前で叱責までした」と評価して、退職勧奨が違法と評価されています。
退職勧奨を検討したい場合は、沖縄の社会保険労務士法人堀下&パートナーズにお問い合わせください。
「説得を重ねた退職勧奨は違法か?」については、こちらをご覧ください。